2018 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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方向に約26 m,およそ820平方メートルの規模で群落を形成していた。以上の調査結果から、これまで日本最北限の分布域とされていた湯河原町福浦のサンゴイソギンチャク群集よりも北に位置することがわかったので、小坪大崎に生息するサンゴイソギンチャクを日本最北限の群集であることを報告するため、日本ベントス学会誌に投稿予定の論文が完成し、投稿準備中である。 サンゴイソギンチャクの周りには、アラメやオオバモク,エンドウモクなどの大型褐藻類がそれぞれ2~8個体/10 ㎡程度の低密度で生育しており,下草相としてはヘリトリカニノテやエチゴカニノテなどの有節サンゴモ類が優占していた。また、群集の周縁では磯焼けが見られたが、ムラサキウニが最大で22個体/㎡と比較的高密度で生息していたこと,アイゴ幼魚やヒブダイ幼魚の小規模な群れが複数観察されたことから,これらがその一因となっているものと推測された. 3. 今年度も昨年度と同様に砂浜海岸生物調査会を開催し、和賀江島と江ノ島で市民と科学者と一緒に生物調査を行う。観察会は海の生き物を守る会および東京経済大学の主催で春と秋に行う予定である。また、鎌倉漁協の許可がおりれば、環境コンサルタント(バディを含め2名)に委託して、稲村ガ崎のスキューバ潜水での調査を行ないたい。小坪の生物調査は磯生物と漁港のデータが揃ったので、今年度は行わずに終了とする。 また、江ノ島と稲村ガ崎の調査で思ったよりもデータがとれていないので、漁港に生息するプランクトンを採集して種同定を行おうと考えている。基本的には顕微鏡下で同定を行うが、もし予算に余裕があればDNA解析で種まで明らかにできればなお良い。また、新たに江奈湾の調査にも着手することにした。 全体的に言えることだが、結局のところ、メジャーな生き物ばかりが同定されてしまうので、そうではなく、もっとマイナーな生き物について調査を行ないたい。 5. 東京都国分寺市南町1-7-34 東京経済大学 042-328-7789 nokubo@tku.ac.jp -187-

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