2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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反応を誘起していると考えられる(4)。 図3 ビニルカルバゾール誘導体を用いた脱アミノ化反応 (A)ビニルカルバゾール誘導体 (B)脱アミノ化反応の経時間変化 また、細胞内のRNAを変換するために光架橋する必要があるそこで、細胞内RNAに対する光架橋反応試験を行った。RNAは細胞内で様々な高次構造を形成しており、核酸プローブがアプローチしにくい領域が存在した。しかし、熱的に不可逆な共有結合を用いることにより、従来は難しいとされていた領域に対してもハイブリダイゼーション・光架橋が可能であることを見出した。RNA-fluorescence in situ hybridization(FISH)の結果から、従来検出の難しかった領域に対しても、光架橋反応を用いる事により、蛍光が確認できることから、高次構造を形成している領域に対しても光架橋している(図3)(5)。高次構造を形成している領域のシトシンに対してもウラシルへと変換可能であることが示唆された。 図3. 細胞内RNAに対する光架橋反応 (A)光架橋型RNA-FISH (B) E. coli 16S rRNA (C), (D) 共焦点像と定量結果 そして、細胞内RNA上のシトシンをウラシルへと変換した際に、変換後のRNAがきちんと機能を回復する必要がある。そのため、変換後のRNAは光開裂し、1本鎖RNAになる必要がある。そのため、細胞内で適応可能な光開裂反応が必要となる。そこで、従来の加熱条件下での312 nmの光照射による光開裂反応ではなく、DNA鎖交換反応を用いた光開裂反応の緩和を検討した。その結果、開裂波長を312 nmから366 nmへと長波長する事に成功した。また、DNA鎖交換反応を用いることにより、加熱を必要とせず配列選択的に光開裂反応を誘起する事に成功した(6)。 3. 今後の展開 今回の研究において、脱アミノ化反応において変換されるシトシンの周辺環境により、脱アミノ化効率の大幅な向上に成功した。対合塩基にはイノシンが最も効率的であり、光応答性核酸にはOHVKを用いた場合に脱アミノ化反応が最も効率的に進行していた。これら技術は組み合わせることも可能であり、今後、脱アミノ化反応を最も効率的に進行することができる組み合わせ(対合塩基と光応答性核酸)を調べる。また、光開裂条件の緩和も含め、全ての操作を37°Cで行える要素技術が揃ったため、生体条件下での光化学的な脱アミノ化反応の検証を行う。 4. 参考文献 (1) Y. Yoshimura, K. Fujimoto, Org. Lett., 2008, 10, 3227. (2) K. Fujimoto, K. Konishi-Hiratsuka, T. Sakamoto, Y. Yoshimura, Chem. Commun., 2010, 46, 7545. (3) S. Sethi, M. Ooe, T. Sakamoto, K. Fujimoto, Mol. BioSys., 2017, 13, 1152. (4) S. Sethi, Y. Takashima, S. Nakamura, K. Fujimoto, Bioorg. Med. Chem. Lett., accepted. (5) K. Fujimoto, K. Toyosato, S. Nakamura, T. Sakamoto, Bioorg. Med. Chem. Lett., 2016, 26, 5312. (6) S. Nakamura, H. Kawabata, K. Fujimoto, ChemBioChem, 2016, 17, 1499. 5. 連絡先 石川県能美市旭台1-1 TEL : 0761-51-1671 E-mail : kenzo@jaist.ac.jp −83−

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