2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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図2 ビーズによって捕捉されたメチル化DNA。 (左)メチル化DNA、(右)非メチル化DNA プローブビーズに対してメチル化DNAを加えたとしてもそれが相補的でなければ捕捉されない(標的DNAに修飾された蛍光色素が観察されない)ことを確認した(図3)。メチル化した(「M」と表示)した配列(ここでは「Sequence2」)が、それを標的にするICONプローブビーズによってのみ捕捉された。非メチル化DNA(「C」と表示)が捕捉されないだけではなく、DNA配列がプローブビーズの配列と相補的でなければ捕捉されず、プローブビーズによるメチル化DNAの捕捉は高い配列特異性を持つことが確認された。 図3 配列特異的メチル化DNAの捕捉 2-5. 血中メチル化DNAの捕捉 ヒト全血の中に微量の蛍光標識メチル化DNAを加え、ここからICONプローブビーズを用いて蛍光標識メチル化DNAの回収を行った。その結果、蛍光標識メチル化DNAの回収が蛍光顕微鏡を用いて確認された。同様の実験を蛍光標識非メチル化DNAに対しても行ったが、回収されなかった。したがって、血中DNAに対しても、メチル化DNAの回収はできることが示された。血漿中でも同様の結果が確認された(図4)。蛍光強度の比較では、全血中からの回収より、いったん血漿にしてから回収した方が回収効率が高いことが示された。 2-6. ビーズからのプローブおよび捕捉DNAの取り外し ドデシル硫酸ナトリウムを含む水溶液でICONプローブ担持ビーズを加熱処理することにより、ビーズからプローブおよびプローブに結合したDNAを取り外すことができた。ドデシル硫酸ナトリウムはアビジンを変性させることができるので、捕捉したメチル化DNAを損傷することなく回収することができた。 図4 血漿中から捕捉されたメチル化DNA。 3. 今後の展開(計画等があれば) ここまでの研究で、ICONプローブ担持ビーズを用いて、血中からメチル化DNAを配列特異的に回収することができた。これは、これまでに抗体や人工核酸を用いて達成できなかった方法であり、画期的な技術である。この技術を用いて、末梢血メチル化cfDNAを回収して低侵襲ながん種の早期診断を可能にするシステムの確立へつなげたい。おそらく、配列ごとに捕捉反応の反応性や元々のメチル化の度合いなどに差異があると考えられ、最も効率よくさまざまな配列を同時に捕捉して観察できるような最適化実験を推進する予定である。 4. 参考文献 (1)Tanaka, K.; Tainaka, K.; Kamei, T.; Okamoto, A.J. Am. Chem. Soc.2007,129 (17), 5612-5620.(2)Tanaka, K.; Tainaka, K.; Umemoto, T.; Nomura, A.; Okamoto, A.J. Am. Chem. Soc.2007,129 (46),14511-14517.(3)Shiura, H.; Okamoto, A.; Sasaki, H.; Abe, K. PLoS ONE2014,9 (4), e95750.(4)Hayashi, G.; Koyama, K.; Shiota, H.; Kamio, A.; Umeda, T.; Nagae, G.; Aburatani, H.; Okamoto, A. J. Am. Chem. Soc.2016,138 (43), 14178-14181. 5. 連絡先 〒153-8904 東京都目黒区駒場4-6-1 東京大学 先端科学技術研究センター 岡本晃充 Phone: 03-5452-5200 e-mail: okamoto@chembio.t.u-tokyo.ac.jp −79−

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