2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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属糸状菌に留まらず,他の病原菌に対しても有効かどうか調査を拡大する計画である. 3. 今後の展開 CgEによる植物成長促進機能や植物保護(病原菌抑制)機能に関しては,上述の通り,現在解析中のCgPとの比較ゲノム・トランスクリプトーム情報を活用することで,まず両菌の感染戦略や生理機能を分かつ分子基盤を明らかにしていく.CgEの効果の汎用性(他の病原菌に対する効果)に関しては今後の解析が待たれるものの,仮に近縁な病原菌に抑止効果が限定されたとしても,本研究で得られたコンセプト「甚大な植物病害をもたらす病原菌には近縁な内生菌が存在するケースが多いと予想され,そのような内生菌を活用することで植物免疫を介して病原菌の抑制を効果的・持続的に行う」自体の汎用性は高いことが予想される.本研究の成果は,そのような新しい植物病原菌の制御技術の開発に向けて道を開く可能性があると考えている.本コンセプトの汎用性を確かめるためにも,また未同定の多数・多様な有用微生物の同定・活用を推進するためにも,同様の手法(野外圃場で育てた植物からの内生微生物の単離並びにモデル植物や作物における性状・機能解析)を用いて,今後も内生微生物に関する研究を展開していく.4. 参考文献 [1] K Hiruma et al., Cell. 2016. 165(2): 464-74. 5. 連絡先 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科植物免疫学研究室 Email:saijo@bs.naist.jp −73−

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