2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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図2精製GalUAdhの諸性質 索した[4].その結果,PQQ結合モチーフを有する,分子量が80 KDa程度を示す,細胞膜局在性であるという 特徴から,遺伝子を5つ候補として抽出した.そのうち機能の詳細が明らかな遺伝子3つについては,研究室保存の遺伝子破壊株および精製酵素の基質特性の調査から排除された.結果として,機能が不明のままとなっているPQQ酵素遺伝子2つのいずれかがGalUAdh遺伝子であることが強く推測された.現在,これら当該遺伝子の過剰発現系の作製を進めているところである. 3) 柑橘果皮の糖化とGalUAの酸化変換からなる統合プロセスの検討 柑橘果皮からのGalAA製造には,糸状菌等を用いた果皮の糖化工程と酢酸菌によるGalUA酸化変換工程の2つの工程を組み合わせて構築する必要がある.まず,糖化工程に適した菌株を得るために,研究室保存菌株より優れたペクチナーゼ生産性をもつ菌株を自然界より単離しAspergillus sp. TPG-01株を得た.本菌株は研究室保存菌株に比べ高い耐熱性および高いペクチナーゼ産生能を示した.柑橘果皮による固体発酵を検討し,果皮粉末のサイズ,水分活性,pH,培養温度等の培養条件を最適化した.一方,分子メカニズムの解析に用いたG. oxydans の育種を待たず,本菌よりも強いGalUA酸化活性をもつ菌株を得るために,自然界より酢酸菌の分離を行った.さまざまな果物果皮を分離源として酢酸菌を分離し,GalUA酸化活性がG. oxydansよりも強い株を選抜し, Tanticharoenia sakaeratensis KH19を得た.本菌はG. oxydansに比べ2.5倍のGalUA酸化活性を示し,さらに高濃度の糖にも生育できる性質が報告されていることから,よりプロセスに適した株と考えられる[5].現在,AspergillusとTanticharoeniaとの2ステップによるバイオプロセスを構築しているところである. 3. 今後の展開(計画等があれば) 本研究により,酢酸菌に学術的にも産業的にも重要な新規ウロン酸酸化系の分子メカニズムを明らかにすることができた.今後は,統合プロセスの構築を引き続き検討し完成させるとともに柑橘果皮以外のバイオマスの試験も行う予定である. 4. 参考文献 [1] P. Richard, S. Hilditch, 2009. Appl. Microbiol.Biotechnol., 82(4):597-604 [2] D. Mojzita, M. Wiebe, S. Hilditch, H Boer, M Penttiala, P Richard, 2010. Appl. Envrion. Microbiol.,76(1): 169-175 [3] Y. Ano, RA. Hours, Y. Akakabe, N. Kataoka, T. Yakushi, K. Matsushita, and O. Adachi, 2017. Biosci. Biotechnol. Biochem., 81(2): 411-418 [4] C. Prust, M. Hoffmeister, H. Liesegang, A. Wiezer, WF. Fricke, A. Ehrenreich, G. Gottschalk, U. Deppenmeier., 2005. Nat. Biotechnol., 23(2):195-200 [5] P. Yukphan, T. Malimas, Y. Muramatsu, M. Takahashi, M. Kaneyasu, S. Tanasupawat, Y. Nakagawa, K. Suzuki, W. Potacharoen, Y. Yamada, 2008. Biosci. Biotechnol. Biochem., 72(3): 672-676 5. 連絡先 住所:愛媛県松山市樽味3丁目5-7 電話番号: 089-946-9708 E-mail: anoy@agr.ehime-u.ac.jp −55−

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