2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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図3. G4構造特異的リガンド(一部) G4リガンドの選択 低分子化合物に対するスクリーニングを行った。今回は、G4に対する特異性をもつ化合物を選択するために、負電荷をもち比較的広い芳香環をもつ化合物群を用いた。その結果それぞれの化合物の解離定数(25ºC)と共に図3に示す。これらの化合物は、過剰の二重らせん構造の有無にかかわらず解離定数を保持したものであり、G4特異性を有する。 ペプチドライブラリもスクリーニングを行った。DNAG4構造とタンパク質複合体の立体構造を指標にしながら、結合に必要な16残基の最小ペプチド(HPGHLKGREIGMWYAK)をもとにして残基を系統的に変化させ計24種類のペプチドを設計・合成した。スクリーニングシステムを用いて結合親和性と特異性について検討を進めている。その結果、一部のペプチドが、DNAG4に特異的に結合することが見いだされた。現在では、ペプチドライブラリに含まれる分子種を増やし、より高い親和性と特異性をもつペプチドの取得を試みている。 このようなスクリーニングと並行して、将来的に展開は必要な細胞内部における核酸の物性評価方法についても検討した。その結果、細胞内部を化学的に模倣し、その分子環境下で核酸の構造安定性を定量的に評価することもできた(5,6)。これらの成果は、次に記す今後の展望につながるものである。 3. 今後の展開 本研究で得られた成果を活用することで、次に示す展開研究を遂行したいと考えている。 1.大規模ライブラリからのスクリーニング:これまでに約200種類の化合物をスクリーニングした。化合物は、申請者の知見をもとに選出したものであり、分子骨格やアミノ酸配列など、既知のG4リガンドに近いものを検討している状況にある。そこで新規性の高いリガンドを選択するには、より大規模なライブラーをスクリーニングする必要がある。現在のところ、生理活性物質とその類縁体の分子ライブラリを考えている。 2.得られたG4リガンドの展開研究:得られた特異性の高いG4リガンドは、様々な展開研究が可能である。特に、細胞内でのG4イメージングと細胞機能制御は、G4の疾患発症機構や遺伝子発現制御機構における役割の解明に極めて重要であることから、細胞への展開を継続して行う必要がある。申請者らは、G4に対する抗体を研究室内で発現させており、細胞内機能評価も行える。最終的にはG4リガンドをG4検出キットや医薬品のリード化合物へと展開できる。 4. 参考文献 (1) J. L. Huppert, S. Balasubramanian, 2005. Nucleic Acids Res., 33: 2908-2916. (2) E. Largy, A. Granzhan, F. Hamon, D. Verga, M.-P. Teulade-Fichou, 2013. Top. Curr. Chem., 330: 111-177. (3) V. Gabelica, R. Maeda, T. Fujimoto, H. Yaku, T. Murashima, N. Sugimoto, D. Miyoshi, 2013. Biochemistry, 52: 5620-5628. (4) H. Yu, X. Gu, S. Nakano, D. Miyoshi, N. Sugimoto, 2012.J. Am. Chem. Soc., 134:20060-20069. (5) Y. Ueda, Y. Zouzumi, A. Maruyama, S. Nakano, N. Sugimoto, D. Miyoshi, 2016. Sci. Technol. Adv. Mater., 17: 753-759. (6) N. Yamaguchi, Y. Zouzumi, N. Shimada, S. Nakano, N. Sugimoto, A. Maruyama, D. Miyoshi, 2016. Chem. Commun,, 52: 7446-7449. 5. 連絡先 〒650-0047 神戸市中央区港島南町7-1-20 TEL: 078-303-1426 E-mail: miyoshi@center.konan-u.ac.jp−49−

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