2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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図1.グアニン四量体とG4構造 図2. DNAG4特異的リガンドの選択方法 核酸四重らせん構造に対するペプチドリガンドのハイスループットスクリーニングシステムの構築 甲南大学フロンティアサイエンス学部 教授 三好 大輔 1. 研究の目的と背景 グアニンに富んだ核酸鎖は四重らせん構造(G4)を形成する(図1)。ヒトのゲノム(DNA)やプロテオーム(RNA)では数万カ所以上でG4が形成される(1)。これらの核酸G4は、細胞のがん化や加齢、様々な疾患発症などに関与している。これまでに、G4に結合する多くの低分子化合物が開発されてきた(2)。一方、30億塩基対もあるゲノムやRNAの大部分は二重らせん構造を形成する。そのため、二重らせん構造と比較して、極めて高い親和性でG4に結合するリガンドが必要である。このようなG4特異的リガンドは、医薬品開発、バイオイメージング、酵素機能の解明などの様々な研究分野で必要とされている。 そこで本研究では、①核酸G4に高い親和性と特異性をもつ分子のハイスループットスクリーニングシステムを構築することを試みた。同時に、標的となる核酸G4構造の細胞内における物性を精査し、スクリーニングシステムの標的分子の設計に用いた。次に、②新規な骨格と官能基を有するライブラリを化学的に作製し、特に、低分子化合物と共にペプチドによるG4の認識を試みた。 2. 研究内容 (実験、結果と考察) スクリーニングシステムの構築 システム構築にはG4とライブラリ分子の結合を読み出すプローブ分子が必要となる。申請者らは、チオフラビンT(ThT)がG4と結合し、数百倍に蛍光強度を増大させることを見出している(3)。このThTとライブラリ分子の置き換え反応によるスクリーニングシステムを設計した(図2)。標的のG4核酸鎖として、ヒトテロメアDNA(細胞のがん化や加齢に関与)を用いた。本配列は、細胞内の分子環境として知られる分子クラウディング状態における立体構造も報告されていることから(4)、標的分子のパイロットケースとして適している。さらに過剰の二重らせん構造としてテロメアをもたないλDNAを加えた。ここにThTを添加すると、ThTはG4のみと結合し、蛍光を発する。さらにライブラリ分子を添加した場合、次のような蛍光強度変化が考えられる。 1.特異的結合: ThTとライブラリ分子の置き換わりによって蛍光強度が減少する。 2.非特異的結合:ライブラリ分子は過剰の二重らせん構造と結合し、蛍光強度は変化しない。 3.非結合:ThTとライブラリ分子の置換は進行せず、蛍光強度は変化しない。 このように、ライブラリ分子の滴定に伴うThTの蛍光強度変化を測定することで、G4のみと結合する分子を同定できる。実際に、G4に対して選択性の高いリガンドと二重らせん構造に対するリガンドを用いて、本システムが機能することを確認した。 −48−発表番号 24〔中間発表〕

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