2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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2.2. 二次元デジタル電気泳動デバイスの開発・評価 以上の結果から、デジタルウエスタンブロッティングに必要な要素が揃ったものと判断した。その実現を目指して、pH緩衝ゲルと分子ふるいゲルを組み合わせた二次元デジタル電気泳動デバイスの開発に移行した。 各一次元デジタル電気泳動によって得られた知見を基に、フォトリソグラフィ技術を利用して平板上にパターン化された積層構造を有する機能性ゲルを調製した。これを用いて、等電点分離・分子ふるい分離の二次元デジタル電気泳動を試みたところ、等電点・分子量が異なるタンパク質試料を一つの積層ゲルデバイス上の異なる位置に分離・濃縮することに成功した (図3) [2]。 2.3. 多次元デジタル電気泳動デバイスの開発・評価 しかしながら、機能性ゲルの三次元立体的な積層は、ゲルの強度、電圧印加デバイスの複雑化、観察方法などの観点から、実現困難であると判断した。そこで、三次元以上の多次元デジタル電気泳動を実現するためのアイデアとして、機能性ゲル充填キャピラリーカートリッジを組み合わせて作製する新規デジタル電気泳動デバイスを考案した。その実現のため、カートリッジ調製法、接続法、ならびに作製したデバイスを用いたデジタル電気泳動分析について検討を行った。デバイスを構成するカートリッジについては、これまでに得られた知見を基に、各種機能性ヒドロゲルをキャピラリー内に充填して調製した。また、カートリッジ外径と同等の内径を有するガラス管に調製した各種カートリッジを並べて接続することで、煩雑な位置調整の手間が不要かつ自由な分析デザインが組み込まれたデジタル電気泳動デバイスを作製可能となった[3]。 作製したデバイスを用いたデジタル分子ふるい分離、デジタル等電点分離、デジタルアフィニティ分離について、それぞれ可能であることが確認された。また、異なる機能性ゲル充填カートリッジを組み合わせることで、異なる分離原理を一つのデバイス内に組み込んだ新規分析手法を容易に実現できることも実証された (図4) [3]。また、分離・濃縮後のカートリッジを分解し、それぞれのタンパク質を分取することも可能であった。 3. 今後の展開 本研究成果から、開発したカートリッジ接続型デジタル電気泳動デバイスによって、多様な原理に基づく分離・濃縮を任意の回数繰り返して分取・分画可能な多次元デジタル電気泳動分析の実現可能であることが示唆された。今後、多様な分析における前処理法としての多次元分画・分取法へと展開していきたい。 4. 参考文献 1. T. Kanaoka, K. Matsuda, K. Sueyoshi*, T. Endo, H. Hisamoto, The Proc. MicroTAS 2014, 67-69, 2014. 2. K. Matsuda, T. Kanaoka, K. Sueyoshi*, T. Endo, H. Hisamoto, The Proc. MicroTAS 2014, 2396-2398, 2014. 3. Y. Aoki, T. Kanaoka, K. Matsuda, K. Sueyoshi*, T. Endo, H. Hisamoto, The Proc. MicroTAS 2016, 1448-1449, 2016. 5. 連絡先 〒599-8531 大阪府堺市中区学園町1-1 大阪府立大学大学院工学研究科 応用化学分野 Tel: 072-254-9477, FAX: 072-254-9284 E-mail: sueyoshi@chem.osakafu-u.ac.jp 図4. カートリッジ接続型デジタル電気泳動デバイス. 図3. 二次元デジタル電気泳動の概略と結果. 図2. デジタル等電点電気泳動の概略と結果. −47−

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