2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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結合の均等開裂により対応する炭素ラジカルが生成すること、反応をスチレンに対し起こすことを見出した。不飽和炭化水素からシクロプロパンを構築するにはカルベンを利用する方法が一般的であるが、本プロセスでは金属は必要なく光とヨウ素のみで同様のシクロプロパン化が進行するため、環境調和型反応としての利用価値が高い。光酸素酸化によるヨウ素触媒的分子内環化反応これまでの結果から、本研究で明らかに条件下発生した電子不足な炭素ラジカルが電子豊富なスチレン類に対し付加反応を起こすことが明らかとなったため、より環境調和型の–結合形成反応を目指し触媒的な反応条件下複素環化合物へと本法を適用した図。図3. 光-酸素酸化による触媒的分子内環化反応すなわち、インドール上の側鎖にマロン酸を置換した化合物を用い脱水素型炭素炭素結合形成反応の検討をした。触媒の検討において、様々な無機塩を用い反応を行った結果、ヨウ化カルシウムを用いることで反応が促進されることが明らかになった。本反応においては、他の無機塩等はほとんど活性を示すことはなく、カルシウムカチオンが反応に関与していることが示唆された。これに加え本反応を他のハロゲン化物に変えて反応を行っても全く反応が進行せず、ヨウ素特異的な反応であることも同時に見出した。また溶媒効果についても検討を行った結果、アルコール系溶媒が総じて高い転化率で反応が進行すること、その中でもアミルアルコールにおいて単離収率で生成物が得られることを明らかにした。この最適化された条件で様々な基質に対して反応を行うと、インドール上の立体,電子的な影響をほとんど受けず、反応は進行し対応する環化生成物を高収率で与えた。また、マロン酸部位も種々他の置換基に置き換えて反応を行うことが可能であること、員環形性は可能だが、員環形性は不利であることも明らかにし、則に従っていることから本応はラジカル型で進行していることが示唆される。最後に反応機構を明らかにするために種々検討を行った結果、詳細な反応機構も同様に確認できた。光酸素酸化によるヨウ素触媒的分子間型反応の結果より、本方法論では触媒的に金属を用いること無く酸化的に炭素ラジカルを生成することが可能である事が明らかにされている。また本反応は分子間反応にも適用できることが示唆された。そこで最後に同様のプロセスを利用した分子間カップリング反応について検討した図。図光酸素酸化的分子間反応 以上のように、最適化した条件下において様々なカルボニル化合物と複素環化合物の型反応は容易に進行し、対応する生成物を良好な収率で与えた。この反応の位置選択性は生成物の単結晶線結晶構造解析により明らかにしている。また、各種コントロール実験でも活性中間体はラジカルが支配的であることを同様に示した。このように触媒量のヨウ素と可視光を利用して発生するラジカル中間体を経由しカップリング反応を行う方法論は、チオフェン誘導体とトリエステル誘導体の分子間カップリングにも適用可能であることを明らかにした。3. 今後の展開 持続可能な化学を実現するには、超環境調和型分子変換反応の開発は必要不可欠である。そのような背景において、本研究助成課題では、一切の遷移金属を利用しない光酸素酸化的な炭素炭素結合形成反応の実用可能レベルでの達成を目指し検討を行ない、触媒量のハロゲンソースを用いることで複素環化合物とカルボニル化合物が酸化的な炭素–炭素結合形成反応が分子内、分子間で効率的に進行することを明らかにした。一方で、本反応系は複素環化合物にのみしか適用できない。それゆえ、よりユビキタスな結合すなわち芳香族化合物の炭素–水素結合の酸化的な切断を伴うカップリング反応実現を目指す。4. 参考文献 [1] C.-J. Li, 2009, Acc. Chem. Res., 42, 335-344. [2] J. E. C. Tejeda, B. K. Landschoot, M. A. Kerr, 2016, Org. Lett., 2142-2145. [3] K. Hattori, A. Ziadi, K. Itami, J. Yamaguchi, 2014, Chem. Commun., 50, 4105-4107. [4] B. B. Snider, 2009, Tetrahedron Lett., 65, 10735-10744. [5] N. Kanai, H. Nakayama, N. Tada, A. Itoh, 2010, Org. Lett., 12, 1948-1951. 5. 連絡先 岐阜市大学西1-25-4 岐阜薬科大学 成薬品製造学研究室 e-mail: yamaguchi@gifu-pu.ac−39−

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