2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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② 酸化的クロスカップリング反応の開発 異種化合物間の二つのC-H/C-H結合切断を経る酸化的クロスカップリング反応は、非対称ビアリール類の直裁的合成法として大変魅力的であるが、望みのC−H結合だけを選択的に活性化することは特に難しい。上記反応の機構解析から、アミノ基上置換基を立体的に嵩高くすれば、ホモカップリングの進行を抑え、クロスカップリング反応が優先すると予測した。そこで、piperidino-2-naphthalene (1)を基質に選択し、3当量のN,N-dimethylaniline (2)と不均一系Rh/C触媒存在下TFA中で反応に付したところ、期待通りクロスカップリング反応が優先し、所望のビアリール体3を高収率かつ高選択的に得た(図3)[3]。2以外にN,N-dibenzylanilineやN,N-dimethyl-m-toluidineを用いても同様に高選択的に酸化的クロスカップリング反応が進行した。さらにアニリン誘導体に加えて、フェノールやアニソール誘導体とのクロスカップリング反応も選択的に進行し、広い基質適応範囲を有することが分かった。これまでに有機ヨウ素試薬や有機電極反応によるクロスカップリングは報告されているが、異なる芳香族アミン同士のクロスカップリングには未適応であった。本反応は、異種芳香族アミン間にも応用でき、不均一系酸素酸化によるクロスカップリング反応として最初の例である。 ③ 分子内酸化カップリング反応の開発 拡張π電子系を有する化合物は、工学・電子・磁気的特性を示すものが多く、機能性材料として有用性が高い。そこで本酸化反応を分子内反応へと展開した。すなわち、o-テルフェニルをPd/Al2O3触媒およびTfOH添加条件下で反応に付したところ、分子内酸化カップリング反応が円滑に進行し、トリフェニレンを高収率で得られることを見出した[4]。メトキシ基のような電子供与性基以外にフェニル基や無置換の基質を用いても分子内酸化カップリングは進行し、所望のトリフェニレンが得られた。そして、対象な置換様式を有するo-テルフェニル以外に、非対称な基質を用いても本酸化カップリングは進行し、多様なトリフェニレンを得ることに成功した。 3. 今後の展開 以上のように、不均一系触媒を用いた芳香族アミン類の触媒的空気酸化型ビアリールカップリングを見出した。本反応は、操作が簡便で触媒の回収・再利用が可能であり、ビアリール化合物の実用的合成法として有用性の高い反応である。今後は、詳細な反応機構解明や、本反応より得られる含窒素ビアリールの新規機能性の開拓を目指した研究を展開したいと考えている。 図3 芳香族アミン類の触媒的クロスカップリング反応 4. 参考文献 [1] K. Matsumoto, K. Dougomori, S. Tachikawa, T. Ishii, M. Shindo, Org. Lett. 2014, 16, 4754-4757. [2] S. Fujimoto, K. Matsumoto, T. Iwata, M. Shindo, Tetrahedron Lett. 2017, 58, 973-976. [3] K. Matsumoto, M. Yoshida, M. Shindo, Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 5272-5276. [4] S. Fujimoto, K. Matsumoto, M. Shindo, Adv. Synth. Catal. 2016, 358, 3057-3061. 5. 連絡先 住所:徳島市山城町西浜傍示180 電話:088-602-8451 E-mail:kmatsumoto@ph.bunri-u.ac.jp −37−

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