2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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非共有結合とトポロジカル機能を組み合わせた 自己修復的接着機能の創製 大阪大学大学院理学研究科講師 髙島義徳 研究の目的と背景近年,材料間の接着ではより強力なだけで無く,可逆的な接着や緩やかな破断を起こす接着などが求められている。一般に材料同士の接着は高分子を主剤とした接着剤を用い,表面の引っ掛かり (Anchor効果) による機械的効果や,Van der Waals力,ぬれ性といった物理的効果,あるいは化学的効果を利用していると考えられている。この際,材料どうしは直接接するではなく,接着剤を介して間接的に接着されている。本研究課題では接着後の材料の強度や耐久性向上のために,被着体どうしが分子レベルで共有結合や非共有結合で直接接着させる分子接着技術の構築を試みた。 研究内容—分子認識を通した高分子ゲル間の接着筆者らはこれまでにシクロデキストリン (CD) と疎水性分子間のホスト-ゲスト相互作用という非共有結合を利用して高分子ヒドロゲルの直接接着をおこなった(図1a)。これらは表面に存在するCDと疎水性分子の包接錯体形成を利用したゲルとゲルの直接接着である1。ゲルと硬質ガラス基板間という異種材料間の接着も達成した2(図2b)。 図1.ホスト-ゲスト相互作用を通した接着。αゲル青、βゲル赤ゲル黄色、ゲル緑を水の入ったシャーレの中で振とうした。ゲルは分子認識を通して、選択的な接着。アゾベンとαは包接錯体を形成する。αゲルはアゾベンを認識し、異種材料間の接着を実現した。—非共有結合を利用した高分子ゲル間の自己修復性接着筆者らは高分子側鎖に修飾したCD と種々のゲスト分子との間のホスト-ゲスト相互作用を用いて、破断した材料を接合させる自己修復性接着を達成した3。このような機能達成に当たっては、これまでのホスト分子だけが修飾された高分子とゲスト分子が修飾された高分子を混合するのではなく、一つの高分子にホスト分子とゲスト分子が同時に導入された高分子の設計が重要であった。得られた高分子材料は切断しても再接着性を示し、非常に延びに優れた高靭性を示した(図2)。このような機能を利用して、この材料を接着層として利用する異種材料間接着の基幹材料になった。 図2.ホスト-ゲスト相互作用を利用した自己修復性・高靭性材料。延伸性・高靭性・自己修復性を示した。 —超分子材料による材料間の自己修復性接着 2-2にて確立した自己修復性超分子材料を用いて、金属間接着や異種材料間接着を試みた。硬質材料基板の表面に重合基を修飾し、βCD、アダマンタン (Ad) それぞれのアクリルアミド誘導体、及び種々の水溶性モノマー(HEA: Hydroxyethylacrylate, AAm: Acrylamide)から重合水溶液を調整した。この水溶液にラジカル開始剤を加え、修飾基板上に塗布し、接着させた。 せん断したサンプルの破断面に少量の水を塗布して、−34−発表番号 17〔中間発表〕

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