2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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発光色素であるナイルレッドを2aに対して3~10 mol%ほど添加したところ、元の水色発光が白色発光へと変化することが分かった。蛍光エネルギー移動効率は約85%であることが分かり、自在に発光色を変化させることが可能であった。 図2(a)1a、1b、2a、2bの分子構造。(b) 1me、2meの分子構造。 2.3 ネットワークポリマー アクリル系のネットワークポリマーの架橋点にTPEを導入するべく、架橋剤A4およびA2を合成した(図3)[3]。モノマーとしてメチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、ブチルアクリレート(BA)、メチルメタクリレート(MMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、スチレン(St)を用い、ラジカル共重合によってサンプルを作成した。ヤング率の測定と発光スペクトル測定より、高ヤング率のものほど短波長で発光し、ΦFも高くなることがわかった。また、A4とA2で比較すると、A2から作製したサンプルの方がヤング率の変化に敏感な発光を示すことが分かった。得られたネットワークポリマーは温度や膨潤度に応答する発光挙動を示したが、A2から作製したサンプルの方がより敏感に環境に応答することがわかった。 図3A2、A4と各モノマーの分子構造。 さらに強固なゲルを用いるべく、当研究室で開発した結晶架橋ゲル(Crystal-Crosslinked Gel、CCG)の架橋剤としてプロパルギルオキシ基を4点修飾したTPEを合成した[4]。アジド基を有する有機配位子と銅(II)イオンを混合して金属有機構造体(MOF)であるKUMOFを作製したのちに架橋し、加水分解してCCGであるKUCCG(TPE)を作製した。得られたCCGは上記のゲルとは違って膨潤時に高いΦFを示した。収縮時は散乱によってΦFが低下したと考えられる。 2.4 共結晶 TPE 誘導体であるテトラ (4- ヒドロキシフェニル ) エテン(THPE)を母核とし、水素結合により他の分子と共結晶を形成させることで、分子環境を変化させたときの結晶構造と発光挙動の相関を検討した。ピリジンやイミダゾール、dabcoなどの誘導体を水素結合アクセプターとして用いたところdabcoとの共結晶を除いて、THPEのフェノールの水酸基が隣接するTHPE同士を水素結合によって会合させ、一次元のテープ状の構造体を形成し、このテープをHBAが水素結合により架橋することで二次元ないしは三次元の構造体を形成することが明らかになった。ピリジン系の化合物との共結晶は非発光となったが、イミダゾール類やdabcoとの共結晶は高いΦFを示した。 3. 今後の展開 本研究を通じて、非常にさまざまな系において、凝集を形成することなく、AIE 特性を惹起あるいは制御することが可能であった。これらの研究を通して得られた知見から、AIE特性の特徴や発現の鍵が明らかにでき、今後さまざまなスマート発光材料の開発に繋がると考えられる。 4. 参考文献 [1] J. Mei, N. L. C. Leung, R. T. K. Kwok, J. W. Y. Lam and B. Z. Tang, 2015. Chem. Rev., 115(21): 11718–11940. [2] T. Machida, R. Taniguchi, T. Oura, K. Kokado and K. Sada, 2017. Chem. Commun., 53(15): 2378–2381. [3] K. Kokado, R. Taniguchi and K. Sada, 2015. J. Mater. Chem. C, 3(33): 8504–8509. [4] T. Oura, R. Taniguchi, K. Kokado and K. Sada, 2017. Polymers, 9(1): 19(1–9). 5. 連絡先 060-0810北海道札幌市北区北10条西8丁目 011-706-3474 kokado@sci.hokudai.ac.jp −27−

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