2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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状況・電力などの制約により大部分が静止画であるが、一部には音声込の動画も含めた。配信画像は巣内2台、給餌池1台の計3台のネットワークカメラで概ね15分に1回自動撮影されたもので、それに、シマフクロウの飛来を感知するモーションセンサーによる撮影画像を加えた。撮影と配信はほぼ同時であるため、閲覧者はライブ画像を好きな時にインターネット経由で見ることができる。個々の配信画像には、シマフクロウの行動や形態、繁殖段階などに関する情報を書き加えたコメントを付け、閲覧者が画像と共に文字による解説を読むことで、シマフクロウへの関心を高め知識を増やすことができるように工夫した(図2)。 図2. 配信画像閲覧ウエブサイト(http://k-rms.info/campic/index) 配信画像に撮影地を特定できる情報は無かったが、念のため、画像配信がシマフクロウ繁殖地の特定を可能にし生息地へのヒトの立入を助長していないか監視するために、巣内育雛期間中、定期的に生息地内の巡視を実施し、生息地へのヒトの立入は認められなかった。 ヒナは孵化から57日目の5月31日に無事巣立った。 ヒナの巣立ちから2週間後の6月14日、配信画像閲覧者全員に対し、googleフォームを用いて作成した17問の質問項目からなるアンケートを送信した。 図3. 配信画像閲覧者へのアンケートトップ画面 アンケートの提出は6月25日を期日としており、まだ結果は得られていないが、今後、回答結果を集計することで、本研究で実践している市民によるシマフクロウの見守りが、絶滅危惧種保全に寄与できるのか否か、その効果を検証する。 3. 今後の展開(計画等があれば) まず、得られたアンケート結果の集計と分析が大きな課題であり、その結果を踏まえ、どのような情報公開手法が絶滅危惧種保全に貢献できるのかを検討した上で、来年度の公開手法を決定する予定である。 本研究では、発表者自身による情報公開手法の構築が大きなテーマであるが、同時に、インターネット上で公開されているシマフクロウに関する記事、とくにシマフクロウを利用している観光従事者および観光体験者による発信記事も収集・分析している。その分析結果から、現在の観光利用がシマフクロウの保全にどのような利益と不利益をもたらしているのかも客観的に評価し、絶滅危惧種保全への貢献度を最大化する情報公開手法を提案したい。それはシマフクロウのみならず、同様の問題を抱える他の絶滅危惧種保全へも大きく貢献できるはずである。 4. 参考文献 ・早矢仕有子(2016)シマフクロウへの給餌と餌付け. 畠山武道(監).小島望・高橋満彦(編). 『野生動物の餌付け問題』. 地人書館. pp. 191-206. ・早矢仕有子・中川元・菊地直樹・涌坂周一・田澤道広・ 高橋満彦(2017)シンポジウム「知床・羅臼町でシマフクロウの観光利用を考える」報告. 知床博物館研究報告 39: 49-66. http://shiretoko-museum.mydns.jp/_media/shuppan/kempo/3907s_hayashi-etal.pdf 5. 連絡先 〒062-8605 札幌市豊平区旭町4丁目1-40 北海学園大学 豊平校舎 電話番号: 011-841-1161(内2294) E-mail : y-hayashi@hgu.jp −211−

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