2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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ていないため、2016年度は、既存の(他地域の)音声情報を用いて、機械学習手法の検討を行った。その結果、ランダムフォレストとサポートベクターマシーンを使用したところ、11種のコウモリ類の音声による識別を属レベルで96%、種レベルで94%の精度で行うことができた(表1)。2-3.森林施業とコウモリ類の活動量の関連性の評価調査地である東京大学北海道演習林において、施業方法の異なる森林4タイプ(保存林、天然林択伐施業林、針葉樹人工林、風害後の二次林)を選び、それぞれ3箇所、計12箇所の調査プロットを設定した。各プロットにおいて、コウモリ類の活動性が最大となる6〜9月にかけて、音声自動録音装置(WildlifeAcoustics社SM-4BAT+:図1)によって各月連続14〜16晩の音声モニタリングを行なった。図1 音声自動録音装置の設置状況 録音された音声を種識別するアルゴリズムはまだ構築されていないため、録音された音声を音声解析ソフトウェア(SonoBatもしくはKaleidoscopePro)によって画像化した後、コウモリ全体の活動量(一回の録音を1通過とした)をカウントした。その結果、コウモリの活動量は、保存林>択伐林>二次林>人工林の順で減少する傾向にあることが明らかになった。ただし、この結果はギルドや種を考慮していないものであり、今後の解析によって森林環境あるいは施業方法に対するコウモリの活動量の種特異的な応答が明らかになるものと考えられる。3.今後の展開3-1.音声ライブラリーの完成図2 森林タイプごとのコウモリの活動量 引き続き、調査地に生息するコウモリを捕獲し、参照音声を収集する。1種につき20個体以上の録音を目標とし、収集した音声をハードディスク上に保管し、参照音声ライブラリーとして整備する。3-2.音声による種判別法の構築上記音声ライブラリーが目標数に達し次第、これまで検討した機械学習法を用いて音声による種判別アルゴリズムを構築する。さらに、畳み込みニューラルネットワークなど、新たな手法も積極的に取り入れ、識別精度の向上を目指す。3-3.森林施業とコウモリ類の活動量の関連性の評価これまでの音声モニタリングで得られたコウモリの録音データを、種判別アルゴリズムを元に種あるいはギルドに分ける。その上で、種ごとの活動量もしくは多様性を応答変数、各プロットにおける森林の各種パラメータ(施業方法、材積、樹木種数、樹木多様性、胸高断面積、平均樹高:これらはすでに取得済み)と地形特性(標高、斜度、斜面方向:これらはすでに整備済み)を説明変数として、各種コウモリの活動量と多様性に影響を及ぼす要因を抽出する。4.参考文献Jones,G.,Jacobs,D.,Kunz,T.,Willig,M.,&Racey,P.(2009).Carpenoctem:theimportanceofbatsasbioindicators.EndangeredSpeciesResearch,8,93–115.5.連絡先北海道富良野市山部東町9−37東京大学北海道演習林tel:0167-42-2111(ext.25)fukuidai@uf.a.u-tokyo.ac.jp050100150200250300350保存林択伐林二次林人工林活動量/晩6月7月8月9月−207−

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