2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
215/223

00.10.20.30.4Goat (2m)Goat (3m)E-AGB(t / ha)0 h6 h12 habbabb 図2放牧後の時間経過に伴うE-AGBの変化 図中の異なるアルファベットは 有意差を示す(Tukey test, P < 0.05). 放牧の影響を比較するため,放牧時間(h)を放牧面積(m2)で除した値を放牧強度(h / m2)とし,放牧強度によるE-AGBの変化を比較すると,E-AGBは放牧前の約3割まで減少して,それ以降は変わらない傾向が示された.すなわち,放牧によって植生が失われる砂漠化プロセスにおいて,喫食行動による植生喪失はE-AGBの約7割程度であり,残りの約3割は喫食行動以外が関係していると考えられる.例えば,喫食のほかに家畜による土壌の踏みつけも原因の1つに挙げられるが,本研究では調査プロットに1頭しか配置していないため,放牧試験における踏みつけによる影響は少なかったと考えられる.今後は家畜の行動パターン別に,放牧による砂漠化プロセスを捉える取り組みが必要である. 資源選択性の検証にはManly et al. (2002)の選択性指数を用いた.選択性指数を用いることによって植物種ごとにヤギが好む選択性かヤギが好まない回避性かを明らかにできる.3 m区の放牧6 h後はAllium bidentatumに対して選択性を示し,2 m区の放牧6 h後と3 m区の放牧6 h後および12 hにおいてAgropyron cristatumなどに回避性を示した.また,2 m区の放牧12hになると選択性や回避性が認められなくなった原因として,餌資源の食べやすい部位が無くなったことが考えられた.ヤギの採食行動を観察すると地際から1 cmまたは2 cm程度を残して食べているので,残された現存量は家畜が食べにくいことによる食べ残しであると考えられる. ウェアラブルカメラ(VIRB Elite, Garmin, USA)をヤギの下顎に取り付け,ヤギがどのように植物を食べて図3ウェアラブルカメラを取り付けたヤギ いるのか経時変化を観察した(図3).撮影した動画を動画編集ソフトで再生・分析し,ヤギが食べた植物の種名を1秒単位で記録した.データは時系列にまとめ,ヤギの餌資源選択の変化について分析した.カメラデータは現在解析途中であるが,放牧試験約8時間までに17種類の植物とリターを食べていることが観察され,放牧試験開始直後1時間の喫食行動でAllium bidentatum,Haplophyllum dahuricum,Convolvulus ammaniiなどを高頻度で食べていることが示された. 3. 今後の展開 気象条件の変化が放牧圧を変化させる可能性について明らかにするため日射条件を変えて放牧試験を行い,気象条件が過放牧による砂漠化プロセスにおよぼす影響について検証する. 4. 参考文献 Grubov, V.I. Key to the Vascular Plants of Mongolia. Science Publishers New Hampshire. 2001 Manly, B.F., et al. Resource Selection by Animals. Springer Netherlands. 2002 Nakamura T, et al. Grassl Sci. 45: 342-350, 2000 Penfound W.T., Howard J.A. Am Midl Nat 23: 165-174, 1940 5. 連絡先 〒305-8572 茨城県つくば市天王台1-1-1 筑波大学生命環境系 Tel: 029-853-4794 Email; kawada.kiyokazu.gu@u.tsukuba.ac.jp −205−

元のページ  ../index.html#215

このブックを見る