2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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評価」,「費用対私益評価」,「社会規範評価」である. モデルの適応にはGFI,AGFI,CFI,RMSEAの4つの指標を考慮した.一般的にGFI,AGFI,CFIは0.9以上,RMSEAは0.05以下であればデータの当てはまりが良いとされている.図中のこれらのモデルの指標を見るとGFIは0.985,AGFIは0.969,CFIは0.983,RMSEAは0.038と最適値を満たしている.よって,これらのモデルの適応性は良いと考えられる. 参加要因モデルでは,有意が見られた因果関係を棒線,有意がみられなかった因果関係を点線で標記する.ここでは,有意がみられた因果関係に注目する. 図2に全サンプルにおける参加要因モデルを作成する.「目標意図」への標準化係数が最も大きいのは,「実行可能性評価」である.全体としては,参加する時間があれば参加したいという気持ちになることがわかる.「行動意図」への標準化係数が最も大きいのは,「社会規範評価」である.参加への最も大きな要因は,地域住民の規範や期待に応えようとする気持であることがわかる.また,「目標意図」から「行動意図」への標準化係数が有意ではないことから,参加したいという気持ちだけでは,実際の行動には繋がらないことが明らかになった. (4) 考察 本研究では,ごみ銀行の特徴が参加形態による意識の差に違いを生じさせていることが明らかになった.会員の参加率が高く会員制度が有効と推測されたごみ銀行は,会員と非会員との間に意識の差があり,会員は非会員に比べて環境への意識が高いという結果が得られた.また会員制度が有効なごみ銀行では,貯金の方法に工夫があり,環境やごみ銀行についてのワークショップを行うなど,積極的に社会活動を行っていることが明らかになった.さらに,ごみ銀行に積極的に参加する重要な要因として私益も重要な役割を果たしていること,比較的消極的な住民も地域の住民の影響によりごみ銀行の活動に参加する傾向があること等が示された. 3. 今後の展開 ごみ銀行を機能させるための会員制度や意識醸成について分析した.一方で,ごみ銀行の有効性については十分に評価されていない.そのために,行政のごみ処理システムと共存することによる環境的・経済的評価をすることが今後の課題である.各都市のごみ銀行の,資源ごみの回収量などの数量データを収集し,ごみ銀行の物理的有効性を調査する必要がある. 4. 参考文献 1) インドリヤニラフマン・細川翔平・松本亨: インドネシアのごみ銀行の参加・協力要因に関する研究, 土木学会論文集G(環境), Vo.72, No.6, pp.Ⅱ_241-247, 2016. 2) Slamet Raharjo, Toru Matsumoto, Taufiq Ihsan, Indriyani Rachman: Community-Based Solid Waste Bank Program for Municipal Solid Waste Management Improvement in Indonesia: A Case Study of Padang City, Journal of Mate-rial Cycles and Waste Management, 2015 (published online) 5. 連絡先 北九州市若松区ひびきの1-1, Tel: 093-695-3231, E-mail: matsumoto-t@kitakyu-u.ac.jp 表2 回転後の因子抽出結果 123456Eごみ銀行はごみ問題を解決できる0.9240.0590.035-0.014-0.028-0.026Fごみ銀行は地域問題の解決にも有効0.654-0.027-0.0910.074-0.010.177O周りの人がごみ銀行の活動に参加している-0.0530.604-0.0270.235-0.0580.096P地域の人から参加を勧められる0.0210.916-0.04-0.054-0.0020.038Q参加しないと地域の人の目が気になる0.030.6160.094-0.1120.07-0.16A街にはごみが散乱している-0.0560.0410.6610.0320.018-0.168B自分が住む都市のごみ問題は解決すべきだ0.0160.0060.597-0.006-0.050.31L活動は大変だが街のごみ問題の解決につながる0.188-0.0570.0680.5920.037-0.039M活動は大変でないうえ収入を口座に貯金できる-0.0310.013-0.0160.7680.015-0.075I時間があれば参加する-0.0030.026-0.0070.0420.8580.069C行政はごみ問題を解決する責任がある0.185-0.0420.21-0.0130.0310.251D自分にもごみ問題を解決する責任がある0.273-0.0370.027-0.0980.0780.481因子質問 表3 潜在変数・観測変数の詳細 潜在変数Q5ごみ銀行はごみ問題を解決できるQ6ごみ銀行は地域問題の解決にも有効Q15周りの人がごみ銀行の活動に参加しているQ16地域の人から参加を勧められるQ17参加しないと地域の人の目が気になるQ1街にはごみが散乱しているQ2自分が住む都市のごみ問題は解決すべきだQ12活動は大変だが街のごみ問題の解決につながるQ13活動は大変でないうえ収入を口座に貯金できるQ3行政はごみ問題を解決する責任があるQ4自分にもごみ問題を解決する責任があるQ9時間があれば参加する環境リスク認知観測変数対処有効性認知社会規範評価費用対私益評価実行可能性評価責任帰属認知 街にはごみが散乱している自分の住む都市のごみ問題は解決すべきだ行政はごみ問題を解決する責任がある自分にもごみ問題を解決する責任があるごみ銀行はごみ問題を解決できるごみ銀行は地域問題の解決にも有効時間があれば参加する活動は大変だが街のごみ問題解決に繋がる活動は大変でないうえ収益を口座に貯金できる周りの人がごみ銀行の活動に参加している地域の人から参加を進められる参加しないと地域の目が気になる環境リスク認知責任帰属認知対処有効性認知実行可能性評価費用対私益評価社会規範評価参加しようと思う参加している・参加していた0.470.720.180.370.620.840.82‐0.030.670.770.640.200.650.880.560.660.860.720.850.29‐0.48‐0.93‐0.560.570.310.380.39‐0.030.110.140.180.37‐0.030.330.340.700.830.630.19****************************************************************************** 注:GFI:0.985, AGFI:0.969, CFI:0.983, RMSEA:0.038*p<.10**p<.05,***p<.01 図2 全サンプルにおける参加要因モデル −201−

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