2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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インドネシアの「ごみ銀行」に関する有効性評価 と成立要件に関する研究 北九州市立大学国際環境工学部 教授 松本 亨 1. 研究の目的と背景 インドネシアでは近年,急速な経済成長と都市化の進展,インフラ整備の遅れから,廃棄物問題が深刻化している.河川等への投棄,埋め立て量の増大とインフォーマルセクターの社会問題は深刻であり,政府による収集・処理体制の整備とともに,コミュニティベースの資源ごみ収集体制が注目されている.具体的には「ごみ銀行」と呼ばれるインドネシア特有のシステムである.2008年に初めて設立され,住民レベルにおけるごみの減量化と資源循環と同時に,その活動から発生する経済利益を得ることを目的としている.近年,全国的に拡がりを見せている. 図1に,インドネシアの一般的なごみ処理フローとごみ銀行の役割を示す.家庭ごみは通常,地域の収集拠点に集められて行政が収集し,最終処分場に捨てられる.その過程でウエストピッカーと呼ばれる人がごみの中から売却可能なごみを回収し,再生資源業者に売却するというインフォーマルな経路が存在する.ごみ銀行は,これらの経路とは別に,市民を中心に構成されたごみの分別・リサイクルの経路である. 本研究1),2)では,バンドン市,パダン市,ランプン市,メダン市,マラン市,スラバヤの計6都市を対象都市とし,ごみ銀行の特徴が参加形態による意識の差に違いを生じさせているかどうかを明らかにする.また,インドネシアのごみ銀行の成立要件について,ごみ銀行がもたらすごみ問題の改善や資源循環といった公益の面と,ごみ銀行の活動に参加する事によってお金を貯めることができるといった私益の両面から,参加・協力に関する意識構造を明らかにすることを目的とする. 2. 研究内容 (1) アンケート調査概要 表1に,アンケート調査概要を示す.調査期間は,2015年10月~2016年11月,回収方法は対面方式及び訪問留置法,回収サンプル数は1,495であった. (2) 因子分析 共分散構造分析を行うために必要な潜在変数を見出すために住民アンケートの調査結果から質問12問を用いて因子分析を行った.因子分析は最尤法,プロマックス回転で行った.回転後の因子抽出結果を表2に示す.分析の結果,6つの因子を抽出することができた.その6つの因子の名称を設定した.次に因子分析によって得られた因子を潜在変数,その因子に含まれる質問を観測変数として設定した.表3にその潜在変数と観測変数の詳細を示す. (3) 共分散構造分析 因子分析の結果をもとに,ごみ銀行への参加意思形成の構造について考察するため参加要因モデルを作成した.作成した全サンプル(n=1,495)における参加要因モデルを図-19に示す.モデル図において直線の矢印は原因と結果の関係を表し,曲線の矢印は互いに関連があることを表す.このモデルについて簡単に説明すると「参加しようと思う」(以下,「目標意図」)を形成するのは「環境リスク認知」と「責任帰属認知」,「対処有効性認知」で,「参加している・参加していた」(以下,「行動意図」)を形成するのは「目標意図」と「実現可能性最終処分場(TPA)ごみ屋売るリサイクル工場収益現金を還元持ち込み回収お金の流れ廃棄物の流れ家庭大学工場行政処理廃棄物発生源本部(民間・政府)ユニットユニットユニット売る収益Waste Pickerごみ銀行・ごみの計量・分別処理・お金の管理(貯金)図1 ごみ処理フロー 表1 調査概要 対象期間回収方法回収サンプル数都市名ごみ銀行の名前都市名ごみ銀行の名前アンダラス大学マンディリセメントパダンレウィンワルヒダヤサビルルガンランプンバンダルランプンダウンキパスメダンインドゥクシ チャナンタマンサリマランコタマランバリクパパンルクンパダンスラバヤバンドン調査対象2015年10月~2016年11月訪問留置法1495 −200−発表番号 95 〔中間発表〕

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