2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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合していることが示された。 ナノ粒子の作製と評価 TEM観察により、粒子が球形で約25 nmの粒径を有していることが分かった(図2. a)。また、DLSにおいても粒径が約25 nmであることがわかり、PDIは0.06であった。均一な粒子が作製できた。温度変化による二蛍光の蛍光強度の変化を評価した。両者とも温度上昇に依存して蛍光強度が下がったが、Rho Bの蛍光強度変化はCouのそれの2倍大きかった(図2. b, c)。これより、蛍光強度比(Rho B/Cou)と温度の関係が算出された。蛍光強度比は温度変化に応答していることが分かった(図2. d)。以上より、作製したナノ粒子が二蛍光強度比の温度依存変化により、温度計測に使用できることが示唆された。 ナノ粒子の細胞内取込み Rho BおよびCouの蛍光がMCF-10A内部より観察された(図3)。また、二蛍光は概ね共局在していた。これより、作製したナノ粒子による細胞内の温度計測の可能性が示唆された。 2-3. まとめ 二種類の蛍光分子が結合したブロックコポリマー(poly(MPC)-block-(BMA-co-Rho)-Cou)を合成し、このポリマーを使用して粒径が25 nmで均一なナノ粒子を作製した。粒子に内包された二蛍光の強度比は温度依存変化を示し、温度計測に適切であることがわかった。細胞内へのナノ粒子の取込みを観察し、細胞内での温度計測が可能であることを確認した。 3. 今後の展開 作製したナノ粒子を腫瘍化能の異なる同一起源の細胞に取込ませ、温度の違いを計測する。具体的には、ヒト前立腺上皮細胞RWPE-1および腫瘍形成能を付加したRWPE-2をそれぞれ非ガン化およびガン化細胞モデルとし、その内部温度の違いを計測する。また、ヒト乳腺上皮細胞の正常細胞であるMCF-10Aおよびガン化した細胞であるMCF-7においても同様の計測をする。上記の実験を通し、作製したナノ粒子による異種細胞の分別能力やガン細胞の特定能力を評価する。 4. 参考文献 1) M. Monti, et al., Schand J Haematol 1986, 36, 353-357. 2) Y. Goto, et al., Biomacromolecules. 2008, 9, 828-833. 3) 國枝博信,坂本一民,”界面活性剤と両親媒性高分子の機能と応用”,シーエムシー出版,(2005)p.145. 5. 連絡先 住所: 東京都文京区本郷3-7-1、電話番号: 03-5841-7125、 E-mail: takai@bis.t.u-tokyo.ac.jp 図3CLSMによるa) Cou b) Rho Bの蛍光画像 c) a、bの重ね合わせ 図2a) 粒子のTEM画像 b) Rho B, c) Cou の蛍光強度の温度依存変化 d)蛍光強度比と温度との相関 −11−

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