2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
181/223

市キャノピーによる影響を受けながら激しく時変動する壁面風圧が,瞬時的にきわめて小さな換気量しか供し得ない状況は,本来もっと関心が寄せられなければならないテーマであった.そこで本研究では,都市域を想定した2種の粗度模型条件下において乱流境界層を再現し,LESによって建物周囲の気流性状と建物壁面に作用する風圧特性の相関関係を定量的に評価検討した. 図3に本研究の対象とする解析領域の模式図を示す.主流,スパン,鉛直方向に対する座標軸をx, y, zとし、これに対応する風速をu, v, wとそれぞれ定義する.表面粗度には1辺H(=24mm)の立方体粗度群を用い,解析領域(4H×4H×4H)内に建蔽率25%の二つの規則的な平面配列条件(整形配列:SQ,千鳥配列:ST)下で都市乱流境界層を再現した.本解析で用いたグリッドサイズはH/16であり,風速統計量を扱う際の推奨解像度条件を満たしている.境界条件には,主流方向とスパン方向に周期境界条件,上空境界にFree-slip条件,地表面境界及び建物壁面境界にNo-slip条件を適用した. (1)式により求めた風圧係数と(2)式により求めた粗度模型風上側壁面上の変動風圧係数の平均分布を図2に示す. ・・・(1) ・・・(2) ここで,, :風上側・風下側壁面圧力(計算領域内の全粗度についてのアンサンブル平均値)[Pa],:空気密度[kg/㎥],:z=2Hにおける主流方向風速[m/s],:粗度模型風上側壁面上圧力の標準偏差とする. 図2(a), 4(b)に示す通り,整形配列の場合の風圧係数,変動風圧係数は千鳥配列の場合に比べて1/2程度の値となっている.また,風圧係数・変動風圧係数共に整形配列では粗度模型外縁部分,千鳥配列では上端部分とスパン方向中心部分に値の大きな領域が確認できる.直方体粗度群で形成されるキャノピー内の流れ場は,粗度密度により“Isolated Flow”, “Wake Interference”, “Skimming Flow”の三つの流れパターンに分類できる事が広く知られており ,本条件下では “Skimming Flow”に分類される流れ場が形成されると考えられるため,粗度模型上端部に風圧係数,変動風圧係数共に大きな値を示す領域が存在しているのだと考えられる.しかしながら,千鳥配列と整形配列の平均風圧係数を比較した場合,千鳥配列条件下での風圧係数が大きくなる領域が整形配列のものに比べて広範にわたっていることが分かる.このことは千鳥配列条件下では整形配列条件下ほどの所謂“Shelter Effect”が生じていないことによるものと考えられ,別途確認したReynolds応力のプロファイルの傾向とも一致する結果となっている. 紙面の都合により解析結果の一部しか紹介できないが,図2から明らかなように,換気回路網計算において換気効率を決める最も基本的なパラメータである建物壁面に対する風圧係数が,鉛直壁面内で大きく分布すること,都市キャノピー内の建物配列が規則的か(整形配列)ランダム的か(千鳥配列)により特性が異なること,さらに時間方向の変動特性の統計指標である変動風圧係数の面内分布が大きいことが示唆された. 3. 今後の展開 Revised TUD-PSに基づく数値実験により,100と程度の住戸集積効果でも大きなピークロード縮減が期待できることが判った.今後の実証研究に繋げたい. 4. 連絡先 〒816-8580福岡県春日市春日公園6-1九州大学大学院総合理工学研究院都市建築環境工学研究室 tanimoto@cm.kyushu-u.ac.jp http://ktlabo.cm.kyushu-u.ac.jp/j/index.html 図3LESによる解析対象ドメイン(a) 整形配列: SQ,(b) 千鳥配列: ST.Ground and cube surfaces: No-slip x (u) z (w) y (v)FlowFlow (a) (b)4H 4H 4H H Side: Periodic Top: Free-slip 図4建物風上側壁面における風圧係数に関する統計両面内分布.(a),(c)は風圧係数,(b),(d)は変動風圧係数で,上パネルが整形配列(SQ),下パネルが千鳥配列(ST).(d) 00.1200.1(b) (a) zy00.2400.2(c) zySQST−171−

元のページ  ../index.html#181

このブックを見る