2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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接合部破壊したRC建築物の復旧法の開発 -途上国の地震被災都市を円滑に再生する耐震技術開発- 大阪大学大学院工学研究科 准教授 真田 靖士 1. 研究の背景と目的 途上国の地震災害では,不適切な設計/施工に起因する鉄筋コンクリート造(RC)建築の破壊が数多くみられる1).中でも接合部の破壊は,建物の層崩壊に繋がる危険な破壊である例えば,2).接合部とは柱・梁が立体的に接合する部位であり,接合部が損傷すると修復が困難である.その結果,被災建物が復旧できず解体・撤去される事例が多い.しかし,接合部を中心に損傷した建物はその他の部位(柱・梁など)の損傷が小さい事例も多く,これらの解体・撤去は経済的な損失が大きく,被災地の円滑な震災復旧を阻害する要因となっている.以上の背景の下,本研究の目的は,筆者らが先行研究3)で開発した接合部の耐震補強法を被災建築の復旧に応用する技術を提案し,検証することである. 2. 研究経過 2015年度は本研究の核である柱梁接合部が脆弱なRC架構の構造実験を実施し,本研究が提案するRC袖壁の増設により地震による損傷を受けた架構の耐震性能を改善・向上できることを実証する実験データを取得した.はじめに,本研究の研究対象として,2013年フィリピン・ボホール島地震で被災したRC建物を設定した(図1).この建物では同地震により柱梁接合部に顕著な損傷が発生し,その後,復旧が困難と判断され撤去された.図2(左図)は建物の外柱を含む梁間方向の部分架構を模擬した試験体である.試験体は2体作成し,ともに地震力を模擬して水平方向に繰り返し載荷した.1体は試験体(以下,無補強試験体J3)が完全に破壊するまで載荷し,もう1体は無補強試験体が最大耐力を記録した架構全体の変形角1.5%まで予め載荷し(参考文献4)の損傷度Ⅲを与え),その後,図2(右図)のようにRC袖壁を増設することによって耐震補強した後,再度,補強後の試験体(以下,補強試験体J3A-WI)が水平耐力を喪失するまで載荷した.図3に実験で利用した静的載荷装置を示す. 図1 研究対象建物 #313004301204040704030304063530#2D4D42011025200140150150583245Beam sectionColumn sectionUnit: mmEnd plateEnd plateFoundation#35555170805570Column anchor70120604040(#2, single)50 Lateral rebar in wing wall (D4, double)Vertical rebar (D4, double)(#2, staggered)80353570120Beam anchorBeam anchorColumn anchorEnd plateEnd plate 図2 試験体(左:既存架構,右:補強架構) 図3 実験装置 図4では無補強試験体および補強試験体の実験より得られた荷重-変形関係について,実験後の損傷状況とともに比較する.無補強試験体は接合部の破壊が支配的となり,最終的に接合部の柱主筋の座屈が発生し,2層で層降伏機構を形成し,水平耐力を喪失した.一方,補強試験体は接合部に予め損傷を与えた後,袖壁増設によ−168−発表番号 81

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