2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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図3 クロメン生成物の合成化学的利用 性化に続く連続挿入反応が進行し,対応するベンゾオキサジノン類が得られた2.例えば,式1に示したと2イソプロピルフェニルイソシアナートとの反応により,対応する固体生成物が得られる(図4).これにUV (365 nm)を照射すると,固体状態顕著な青色発光を示した.かさ高いトリイソプロピルシリル(SiPr3) 基と窒素上のイソプロピルフェニルによる分子間の接近が抑制されたため,凝集誘起発光 (AIEE) 4が発現したものと考えられる. 図4 アルキニルエーテルとイソシアナートとの反応 イソシアナートに替えてノルボルネンを同一触媒条件下で反応させると,オルト位だけでなくメタ位のC–H結合の切断,アルキノキシ基への移動水素化を伴った反応が進行し,ベンゾシクロブテン類が生成した(図5)3.アルキノキシ基は配向基としてだけでなく,水素の受容体として機能している.このようなアルキンへの移動水素化を伴った,脱水素炭素-炭素結合形成反応が進行することはきわめて珍しい.一方,Pd(OAc)2ではなくパラジウム(0)錯体,Pd(PCy3)2を用いると,生成物がと類似した6員環生成物クロマン類に変わる4. ° 図5 アルキニルエーテルとノルボルネンとの反応 不飽和結合配向基の拡大および一般化不飽和結合配向基の拡大および一般化不飽和結合配向基の拡大および一般化不飽和結合配向基の拡大および一般化 いろいろな不飽和結合官能基を配向基に用いる研究を進めた.本研究を検討するため,モデル反応として初めにアルキノキシ基を用いるC–H結合の活性化を伴ったビアリールの分子内環化反応を開発した(図6)5. αδ° 図6 アルキニルエーテルとノルボルネンとの反応 この成果をもとに,分子内にアルキニル基を有するいろいろな有機化合物を合成し,C–H結合の活性化を伴う反応を網羅的に検討した.その結果,図7に記した化合物を用いてそれぞれに適切な触媒条件を適用することにより,近傍のC–H結合が活性化され,フルオレン誘導体またはベンゾフラン誘導体にそれぞれ変換した. 図7 C–H結合の活性化に成功したアルキニル化合物 3. 今後の展開 本研究により不飽和結合を用いるC–H 結合を自在に活性化,変換するための端緒を得た.この成果は単に不飽和結合を配向基として考えるのではなく,不飽和結合基と金属触媒さえあれば,分子内にとどまらず,あらゆるC–H結合を自在に活性化できる可能性を示したものである.今後は,単純アルキンやアルケンなどより一般的な不飽和結合を用いて,パラジウムなどの遷移金属触媒との相互作用を利用する,いろいろな分子のC–H結合を活性化して,本手法でのみ達成できる新しい構造および機能を有する有機化合物を構築する反応群の創製へと展開する. 4. 参考文献 1) Y. Minami, T. Hiyama, et al. ,1210. 2) Y. Minami, T. Hiyama et al. , . 4522. 3) Y. Minami, T. Hiyama, et al. , , 11813. 4) Y. Minami, T. Hiyama, et al. , , 1388. 5) Y. Minami, T. Hiyama, et al. ,1791. 5. 連絡先 東京都文京区春日11327 Phone: 0338171904. E mail: yminami@kc.chuou.ac.jp−7−

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