2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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で提案した簡易評価法を用いることにより、常に1次モード比例外力に基づく等価線形系の動的特性を算定でき、限界耐力計算を適用することができる。 例として、α = 0.3, β = 1, Lx/Ly = 0.75を考慮する。剛側構面は支持重量W/2(W:建物全体の支持重量)として層せん断力係数C0 = 0.2の地震力に対する応答変形角が1/120radとし、滑り摩擦係数μ = 0.5とする3)。補強として剛側構面および直交構面にΔK = K, ΔK' = 0.5Kの剛性を付加する。 地震動の擬似加速度応答スペクトルは、極大地震を想定して減衰定数5%時のスペクトル一定領域で980cm/s2とし、T = 0.64秒以上では周期に反比例して低下させるように設定した。 図3に計算結果を示す。Acc./g-R関係とSpa/g-R関係の交点が地震最大応答を示す。横軸の層間変形角Rは重心位置で定義されるため、柔側構面の変形角R1とRの比率(R1/R)も図中に示した。図3(a)は非線形を考慮した場合、図3(b)は比較のため非線形を無視した弾性応答の場合であり、本システムは剛側構面を滑らせることで、弾性応答に比較して加速度(Spa/g)と変位(R)の低下、偏心の改善(R1/Rの低下)により、柔側構面の最大変形角(R1)を低減させることができている。 ただし、上記の検討はいわゆる比例減衰系を仮定したため、非比例減衰の影響を加味した線形理論式を適用し、事後評価を行う。簡便な振動解析モデルとして柔側構面と剛側構面のみ考慮した並列2質点系を用いた。図3(a)に示した最大応答時の等価剛性と定常ループにおけるエネルギー吸収が等価な線形系を作成した。図4に伝達関数を示す。図中には研究代表者が文献4で提案した定常理論に基づく縮約1自由度系の伝達関数も重ねて示している。また、図中に示す赤丸3点は、減衰の大きさに寄らずに通る定点であり、縮約1自由度系の共振点(図中緑丸)が最小円振動数の定点(図中赤破線丸)の近傍にあるため、本システムは与えられた剛性バランスの中では地震応答を極小化する最適な減衰が付与されていると理解できる。図中の赤線は比例減衰を仮定した場合の伝達関数である。共振点の振幅の誤差があり、非比例減衰の影響が見られる。 3. 今後の展開 構造的弱点である開口部を最優先に補強することが肝要であるが、それができない場合、水平構面の面内剛性の向上もある程度効果が期待できる。今後の展開として、水平構面の補強も含めた剛性バランスの改善、さらにはパッシブ制振ダンパーの利用など、より積極的な性能改善策が考えられる。 4. 参考文献 1) 山崎義弘, 笠井和彦, 坂田弘安 : 一軸偏心した非剛床木質構造の動的特性および地震応答に関する基礎的研究, 日本建築学会構造系論文集, 第663号, pp.959-968, 2011.5 図3限界耐力計算による応答比較 図4等価線形系の伝達関数 2) 山崎義弘, 坂田弘安 : 非剛床をもつ1層木質構造物における動的捩れ効果と簡易評価法, 日本建築学会構造系論文集, 第739号, 2017.9(掲載予定) 3) 河合直人, 和田幸子, 中川貴文, 五十田博, 岡部実, 箕輪親宏 : 伝統的木造住宅の垂れ壁付き構面振動台実験 : その2 柱脚の移動量とその予測方法, 日本建築学会大会学術講演梗概集C-1分冊, pp.39-40, 2008.7 4) 山崎義弘, 笠井和彦 : 非線形並進・捩れ振動の定常理論によるスペクトル応答予測法, 日本建築学会構造系論文集, 第674号, pp.555-564, 2012.4 5. 連絡先 東京都目黒区大岡山2-12-1 M1-32 東京工業大学環境・社会理工学院建築学系 E-mail:yamazaki.y.ai@m.titech.ac.jp 00.20.40.60.811.21.41.600.20.40.60.8100.010.020.030.040.05Story drift angle R (rad) Acc./g, Spa/gR1/R Acc.-R curve Spa-R curveR1/R-R curve Response (a) 非線形考慮 00.20.40.60.811.21.41.600.20.40.60.8100.010.020.030.040.05(b) 弾性応答 Story drift angle R (rad) Acc./g, Spa/gR1/R 0123450123456f (Hz) f1 and f2 when proportional damping is assumed Fixed points Resonance point of reduced SDOF |U1/(Ugω2)|2DOF Reduced SDOF2DOF(proportional damping) −159−

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