2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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る。部材は線材で表し、梁と柱、土台と柱、梁・柱と筋かい、土台と柱・筋かい、梁と方づえ、柱と方づえの各接合部の抵抗要素は既往の文献3)~5)を参照してバネで置き換える。解析に用いた部材の材料定数は既往の文献3)の値を参照した。シミュレーション解析は増分解析とし、荷重は並進方向にそれぞれ0.001kN刻みで与える。 図5に真のせん断変形角と荷重の関係について実験値と解析値の比較を示す。3つの試験体いずれも解析値は実験値に概ね一致し、木造学校校舎の主要な耐震要素である軸組、筋かい、方づえのフレームモデルを構築できた。しかし、推定精度には課題は残っている。試験体Bについては、実大実験で柱脚の浮き上がりを完全に防止できていなかったため、解析値が実験値を上回ったと考えられる。試験体Aと試験体Cについては、バネ定数の計算に安全側の評価となる設計式を採用したため、解析値が実験値を下回ったと考えられる。また、木材の材料強度が場所によってばらつきがあることも要因の一つと考えられる。 3. 今後の展開 本研究では、既往の実大実験結果を基に、愛媛県八幡浜市に現存する木造学校校舎の耐震性能評価のため、建物の振動特性を把握し、主要な耐震要素である軸組、筋かい、方づえのフレームモデルを構築した。木造学校校舎は水平構面が柔らかく、建物の平面形状が横長のため、各構面が独立して振動していると考えられる。建物を耐震性能評価するためには、主要な耐震要素である軸組、筋かい、方づえを適切にモデル化し、建物全体の立体フレームモデルを作成する必要がある。今後は本研究で構築したフレームモデルを用い、木造学校校舎全体を立体的にモデル化する予定である。モデルの妥当性は常時微動計測結果で検証し、最終的には建物全体の耐震性能を詳細に評価し、最適な耐震補強法を検討する。 4. 参考文献 1) 西川航太,腰原幹雄:愛媛県八幡浜市に現存する近代木造校舎の構造性能に関する研究,日本建築学会大会学術講演梗概集(東北),pp.221-222,2009.8 2) 宮本慎宏,宇都宮直樹,和田耕一,杉森正敏:既存木造校舎の耐震性能に関する実験的研究,日本建築学会大会学術講演梗概集(北海道),pp.293-294,2013.8 3) 日本建築学会:木質構造設計規準・同解説-許容応力度・許容耐力設計法-,2006.12 4) 坂田弘安,山崎義弘,宇田川洋隆,大橋好光:曲げせん断を受ける長ほぞ差し込栓打ち接合部の力学的挙動に関する研究,日本建築学会構造系論文集,第77巻,第671号,pp.45-54,2012.1 5) 日本建築学会:木質構造接合部設計マニュアル, 2010.9 5. 連絡先 〒761-0396 香川県高松市林町2217-20 TEL/FAX: 087-864-2161 E-mail: miyamoto@eng.kagawa-u.ac.jp 図4試験体詳細図図5解析値と実験値の比較(b)試験体B (a)試験体A (c)試験体C (b)試験体B (a)試験体A (c)試験体C -3-2-101234-0.1-0.0500.050.10.15荷重P[kN]真のせん断変形⾓γ[rad]実験解析-20020406080-0.0500.05荷重P[kN]真のせん断変形⾓γ[rad]実験解析-10-50510-0.10-0.050.000.050.100.15荷重P[kN]真のせん断変形⾓γ[rad]実験解析−157−

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