2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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精度をもちつつ、ミリメートルオーダーの移動ストロークを実現できる。本研究ではすべての構成部品を非磁性にすることで、強磁場中での動作を可能にした。スライド可変抵抗による位置エンコーダを備えており、リアルタイムでの位置制御が可能になっている(図4)。 開発したピエゾステージを用いて実際に磁気チップ付きカンチレバーを試料に対して1次元走査し、チップ-試料間の距離に依存したESR信号の検出に成功した。 (4)超高感度カンチレバーの自作(図5)。ナノ磁気共鳴イメージングの開発には検出器であるカンチレバー自身の高感度化が必要不可欠である。MEMS技術を用いたカンチレバープロセスにより光検出型カンチレバー、ピエゾ抵抗型カンチレバー、静電容量型カンチレバーを作製した[7]。カンチレバーの厚さは2 mである。実際に作製したカンチレバーを用いてテラヘルツESR測定を行った。その結果、光検出型カンチレバー、ピエゾ抵抗型カンチレバーでは0.16 THzまでの周波数領域でESR信号の検出に成功した。 また、本助成を受けて簡易電子線描画装置を導入し、サブミクロンサイズの磁気チップ付きナノカンチレバーの作製に向けた開発を行った。現在、描画条件の最適化に向けた条件だしを行っている。 3. 今後の展開(計画等があれば) 自作した超低バネ定数カンチレバーを用いてNMR信号の検出を行う。まずは、測定が容易な1H核に着手し、1H核イメージングを可能にする。測定のために必要なRF測定系は既に構築済である。また、本助成により導入した電子線描画装置を用いて、微小な磁気チップ付きのカンチレバーの作製を進めたい。 4. 参考文献 [1] H. Takahashi, E. Ohmichi, and H. Ohta, Applied Physics Letters 107 (2015) 182405/1-3. [2] E. Ohmichi, Y. Tokuda, R. Tabuse, D. Tsubokura, T. Okamoto, and H. Ohta, Review of Scientific Instruments 87(2016) 073904/1-9. [3] H. Takahashi, T. Okamoto, E. Ohmichi, and H. Ohta, Applied Physics Express 9 (2016) 126701/1-4. [4] E. Ohmichi, T. Okamoto, M. Mitani, H. Takahashi, Hitoshi Ohta, Journal of Inorganic Biochemistry 162 (2016) 190-193. [5] T. Okamoto, H. Takahashi, E. Ohmichi, and H. Ohta, Journal of Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves 37 (2016) 1173-1184. [6] “Force-detected ESR measurements in a terahertz range up to 0.5 THz, T. Okamoto, H. Takahashi, E. Ohmichi, H. Ohta, Applied Magnetic Resonance 48 435-444 (2017). [7] E. Ohmichi, T. Miki, H. Horie, T. Okamoto, H. Takahashi, S. Itoh,H. Ohta, submitted (2017). 5. 連絡先 住所:〒657-8501兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1 神戸大学大学院理学研究科物理学専攻 電話:078-803-5656 E-mail:ohmichi@harbor.kobe-u.ac.jp 図4 ピエゾ駆動3軸ステージ 図4 ピエゾ抵抗検出型マイクロカンチレバー。 図3 (左)ヘミンの多周波数ESR測定。(右)ヘミンの周波数磁場プロット。実線は1軸性ハミルトニアンに基づくフィッティング曲線。 −153−

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