2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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低発電コストを実現する擬似単結晶シリコンゲルマニウム薄膜太陽電池の開発筑波大学数理物質系助教都甲 薫1.研究の目的と背景(1)研究の背景 太陽光発電ロードマップ(NEDO PV Challenge 2014)では、2030年までに発電コスト7円/kWhの太陽電池を開発することが目標とされており、高い変換効率と生産効率の両立が課題となっている。 ガラス上の微結晶Si薄膜太陽電池は、材料費削減と大面積形成を可能とし、高い生産効率を持つ。しかし、Si薄膜は光吸収能が低く、赤外光を吸収できないことに加え、膜中の結晶粒界が光励起キャリアをトラップするため、高効率化は限界に達しつつある。(2)研究の目的 本研究では、擬似単結晶SiGe薄膜太陽電池を提案する。SiGeは光吸収係数が大きく、薄い膜でも赤外光の吸収が可能である。また、結晶粒径が10 µmを超えると、単結晶と同等の効率(擬似単結晶化)が期待される。本研究では、SiGeの結晶成長技術を確立し、優れた太陽電池特性を実証することを目的とする。 本課題の達成には、「如何にしてガラス(耐熱温度:550℃)の上にSiGe層を高品質形成するか」が鍵となる。本年度においては、独自技術である「Al誘起成長法(Al-Induced Crystallization:AIC)」[1-4]をSiGeに応用することにより、粒径が擬似単結晶サイズ(>10 µm)のSi1-xGex(x: 0-1)薄膜をガラス上に低温形成することを目指した。2.研究内容(実験、結果と考察) 石英ガラス基板上に、Al薄膜(50 nm)をスパッタリング堆積し、試料を30分間大気に暴露することで、Al表面に酸化膜を形成した(図1)。酸化膜形成後、厚さ50 nmのSi1-xGex薄膜(x: 0, 0.15, 0.3, 0.6, 1)をスパッタリング堆積した。堆積完了後、光学顕微鏡でその場観察を行いながら熱処理を施し、層交換を誘起した。層交換成長後の試料をHF(1.5%)に2 min浸漬し、表面のAlを除去した。Al除去後の試料に対し、電子線後方散乱回折(EBSD)法を用いることで配向性・結晶粒径の評価を行った。 光学顕微鏡その場観察熱処理により、各組成におけるドメイン成長を観測した。各組成の試料について、熱処理時間の増加に伴い、Al層中にSi1-xGexの結晶核が生じ、やがて拡大していく様子が観察された(図2)。熱処理温度の高温化に伴い、核密度の飽和値が増加した。つまり、低温化に伴って飽和ドメイン径が増加することが分かった。また、成長温度が高温であるほど、ドメインの横方向成長速度は大きくなった。 その場観察の結果をもとに、熱処理温度に対する核発生頻度および横方向成長速度をアレニウスプロットした(図3)。これらの直線の傾きから、核発生と横方向成長の核発生エネルギーと頻度因子を算出した。核発生および横方向成長の活性化エネルギーは、Ge組成比が増えるにつれて減少した。Ge組成比が増えるほど低温で結晶化可能であることを示している。また、核発生と横方(1)Al堆積・大気暴露AlOx(2)SiGe堆積(4)Al除去(3)熱処理・層交換図1. 試料作製手順図2. Si0.85Ge0.15試料(425oC)の光学顕微鏡像Si0.85Ge0.15Si0.85Ge0.15(c) 2 h(d) 2.5 h425 oC(a) 1 h20 μmSi0.85Ge0.15(b) 1.5 hSi0.85Ge0.15AlAl20 μm20 μm20 μm−148−発表番号 72  〔中間発表〕〔中間発表〕

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