2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
135/223

-Annulus ペプチドの C 末端側に一本鎖DNA(dA20, dT20)を有するコンジュゲートを合成し、それらの自己集合により、一本鎖DNA を表面提示した人工ウイルスキャプシドを構築した(図2A)。DLS測定および TEM観察により、粒径 60-150 nm 程度の球状集合体形成 が確認された。DNA のアニオン間反発があるにもかかわらず、安定な球状集合体を形成したことは大変興味深いと思われる。また、dA20提示人工ウイルスキャプシドにpoly-dAを添加しても変化は無いが、poly-dT を添加すると凝集が起こることが分かった(図2B, C)。つまり、表面の核酸を認識し、ハイブリダイゼーションできることがわかった。 2-3. 人工ウイルスキャプシド表面へのコイルドコイルペプチドの提示[9] アデノウイルスなど、ある種の天然ウイルスはキャプシド表面にタンパク質の突起を有しており、この突起により細胞に取り込まれやすくなることが知られている。そこで、表面に突起状のコイルドコイルペプチドを有する人工ウイルスキャプシドの構築を検討した(図3A)。 キャプシド表面に配向するC末端側にコイルドコイル形成配列を有する-AnnulusペプチドINHVGGTGGAIMAPVAVTRQLVGGCGGGKIAALKKKNAALKQKIAALKQ (-annulus-coiled-coil-B)をNative Chemical Ligation (NCL) 法を用いて合成した。このペプチド単独では、30 nm程度の球状集合体を形成することがDLSおよびTEMから明らかとなった。これに相補的なコイルドコイル形成ペプチドEIAALEKENAAL EQEIAALEQ (coiled-coil-A)を添加することで、キャプシド表面でのコイルドコイル形成を検討した。-annulus-coiled-coil-B 50 Mに対して、12.5 M coiled-coil-Aを混合させたところ、5 nm程度の粒状構造が吸着した40-50 nm程度の球状集合体の形成がTEMにより確認された(図3B)。一方、-annulus-coiled-coil-Bとcoiled-coil-Aを等量混合した場合は、繊維状の集合体へと転移することが明らかとなった。 3. 今後の展開 SNAP-tag やHis-tagなどのタンパク質タグを利用して、人工ウイルスキャプシド表面にタンパク質(リゾチームや西洋わさびペルオキシダーゼなど)を提示するための一般的手法を確立する。また、人工ワクチンを指向した抗原ペプチドを表面提示した人工ウイルスキャプシドの創製も検討する。 4. 参考文献 [1] K. Matsuura, RSC Adv., 4, 2942 (2014). [2] K. Matsuura, K. Watanabe, K. Sakurai, T. Matsuzaki, and N. Kimizuka, Angew. Chem. Int. Ed., 49, 9662 (2010). [3] K. Matsuura, K. Watanabe, Y. Matsushita, and N. Kimizuka, Polymer J., 5, 529 (2013). [4] S. Fujita and K. Matsuura, Nanomaterials, 4, 778 (2014). [5] S. Fujita and K. Matsuura, Chem. Lett., 45, 922 (2016). [6] K. Matsuura, T. Nakamura, K. Watanabe, T. Noguchi, K. Minamihata, N. Kamiya, and N. Kimizuka, Org. Biomol. Chem., 14, 7869 – 7874 (2016). [7] K. Matsuura, G. Ueno, and S. Fujita, Polymer J., 47, 146 (2015). [8] Y. Nakamura, S. Yamada, S. Nishikawa, and K. Matsuura, J. Pept. Sci., in press [DOI: 10.1002/psc.2967]. [9] S. Fujita and K. Matsuura, Org. Biomol. Chem., in press [DOI: 10.1039/C7OB00998D]. 5. 連絡先 〒680-8552鳥取市湖山町南4-101 鳥取大学大学院工学研究科化学・生物応用工学専攻 E-mail: ma2ra-k@chem.tottori-u.ac 図3. (A) コイルコイルペプチドを有する人工ウイルスキャプシドの構築の模式図.(B) -Annulus-coiled-coil B (50 M)単独でのTEM像.(C) -Annulus-coiled-coil B (50 M)に12.5 M Coiled-coil A peptide を添加した際のTEM像. −125−

元のページ  ../index.html#135

このブックを見る