2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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機能性生体分子を装備した人工ウイルス殻の創製 鳥取大学大学院工学研究科 教授 松浦 和則 1. 研究の目的と背景 近年、ペプチド・タンパク質の自己集合を分子設計することで、様々な機能性の人工ナノ材料が構築されている[1]。我々は、トマトブッシースタントウイルスの骨格形成に関わっている -Annulus ペプチドが水中で自己集合 することにより、30 ~ 50 nm の中空の人工ウイルスキャプシドを形成することを見出し、様々な分子を内包できることを明らかにしてきた[2-6]。また、人工ウイルスキャプシドの表面に、ヒト血清アルブミン (HSA)や金ナノ粒子[7]の表面修飾にも成功している。 本研究では、分子認識特性・触媒活性・免疫活性化などの機能性を有する生体分子を人工ウイルスキャプシドに単層修飾する一般的方法論を開拓し、機能性ナノカプセルとして応用することを目的とする。今回は、人工ウイルスキャプシド表面への リボヌクレアーゼ S (RNase S)、一本鎖 DNA(dA20, dT20) [8]、ならびにコイルドコイルペプチド[9] の修飾を検討したので報告する。 2. 研究内容 2-1. タンパク質再構成による人工ウイルスキャプシド表面への RNase Sの提示 リボヌクレアーゼS (RNase S) はS-peptideとS-proteinが106 M-1程度の会合定数で再構成される酵素であることが知られている。C末端側に S-peptide 配列を有する -Annulus-S-peptide を合成すれば、再構成によりRNase Sを表面提示した人工ウイルスキャプシドを構築することが可能と考えられる(図1A)。 C末端側を Nbz 基で活性化した-Annulus-Nbz (INHVGGTGGAIMAPVAVTRQLVGG-Nbz)をFmoc固相合成し、C末端をBenzyl mercaptane により-Annulus-SBnに変換させた。 この -Annulus-SBn と Cys残基を N末端に有する S-peptide (CGGG KETAAAKFERQHMDS)をNative Chemical Ligation 法により連結し、-Annulus-GGG-S-peptide を合成した。Peptide単独 (25 M)の TEM 像において、40 nm程度の球状集合体が確認された(図1B)。また、Peptide 25Mに対して S-protein を 10M 加えたときのTEMにおいて、60 nm程度の球状集合体の周囲に酵素が吸着したと思われる像が確認され(図1C)、 DLS 測定より 50 nm程度の粒径の集合体形成が確認された。この ことから、 -Annulus-GGG-S-peptide と S-protein を再構成しても球状集合体を形成することが確認された。 2-2. 人工ウイルスキャプシド表面への一本鎖 DNAの提示[8] DNAは、遺伝子発現制御素子としてだけでなく、特定分子に対するアプタマーや、生体分子を連結するためのプラットフォームとして有用である。ここでは、 図1. (A) RNase S提示人工ウイルスキャプシドの構築の模式図.(B) -Annulus-GGG-S-peptide(25 M)単独でのTEM像.(C) -Annulus-GGG-S-peptide(25 M)に10 M S-protein を添加した際のTEM像. 図2. (A)一本鎖DNA提示人工ウイルスキャプシドの構築の模式図.(B) polyT存在下、(C) poly dA存在下でのdA20提示人工ウイルスキャプシド(25 M)のTEM像のTEM像. −124−発表番号 61 〔中間発表〕表〕

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