2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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虫誘引活性が見られた。この活性を元に、逆層C18カラムで精製すると、弱い疎水性画分に活性が検出された。その活性画分を、さらにイオン交換クロマトグラフィーにより分画したところ、弱い酸性画分に活性が検出された。その画分を、つぎに、ゲル濾過クロマトグラフィーにかけることで、活性分子が、分子量1000〜2000程度である事が予想された。今後、精製を進め、ダイズから線虫誘引物質を単離・確定したいと考えている。さらに、シロイヌナズナの種子ムシゲルにも線虫誘引活性が有ることがわかっていたが、ムシゲル担体では誘引活性が無く、生きた種皮とムシゲルが同時に存在するときのみ、誘引活性を示すことがわかった。一方、様々な植物種子ムシゲルを試験した結果、誘引活性が有る種子と無い種子がある事がわかった。さらに、フラックス種子のムシゲルは、担体で誘引活性を示すことがわかった。このことから、フラックス種子のムシゲルは、線虫誘引物質の研究に適した材料である事が明らかとなった。3.今後の展開2017年度以降、以下の研究を継続して行う予定である。①CLE遺伝子の機能解析本年度の研究から、全身的な線虫感染シグナルとして、CLE3-CLV1経路が機能する事が示唆された。そこで、本年度は、より確かな確証を得るために、接ぎ木実験を行う。台木と穂木に野生型とclv1突然変異体を用い、地上部と地下部のどちらのCLV1遺伝子が、線虫感染シグナルに関与するかを検証する。また、cle3突然変異体を用いてスプリットルート実験を行い、根でのCLE3遺伝子の機能を明らかにする。②ダイズの根抽出物からの線虫誘引物質の精製現在、分子量の推定まで出来ているので、さらに精製を進め、誘引物質の同定を目指す。現在、ペプチドの可能性を考えているので、ペプチドシーケンスやMSによる同定を目指す。③線虫感染過程における他のエフェクタータンパク質の解析;すでに線虫が植物に注入するエフェクタータンパク質のプロテオームを行い、複数の候補を得ている。これらの候補遺伝子を用いて、分子遺伝学的解析を行い、植物体内での線虫感染時の機能について明らかにする。④植物のムシゲル中の多糖に誘引活性があることがわかっている。しかし、ムシゲルのみでは、誘引活性が無い。様々な植物種子を用いた実験を行った結果、フラックス種子のムシゲルでは、ムシゲル担体で誘引活性が有ることがわかった。そこで、このフラックス種子のムシゲルを用いて、線虫誘引物質の精製を試みたいと考えている。4.参考文献1;Oota,M.,GotohE.,EndoM.,Ishida,T.,Matsuhita,T.,andSawa,S.(2017)NetagivephototaxisinM.incognita.InternationalJ.Biol.9,51-55,doi:10.5539/ijb.v9n3p512;Fukunaga,H.,Arita,T.,Higaki,T.andSawa,S.(2017)AnewformofGastrodiapubilabiata(Orchidaceae).ActaPhytotax.Geobot.68,45-52.3;Suetsugu,K.,Hsu,T.C.,Fukunaga,H.,andSawa,S.(2016)Epitypification,emendationandsynonymyofLecanorchistaiwaniana(Vanilleae,Vanilloideae,Orchidaceae).Phytotaxa,265,157-1634;Hasegawa,J.,Sakamoto,Y.,Nakagami,S.,Aida,M.,Sawa,S.,andMatsunaga,S.(2016)Three-dimensionalImagingofPlantOrgansUsingaSimpleandRapidTransparencyTechnique.PlantCellPhysiol.(4.3)57,462-472.5.連絡先〒860−8555熊本県熊本市中央区黒髪2丁目39番1号熊本大学大学院自然科学研究科澤進一郎電話;096-342-3439FAX;096-342-3439e-mailaddress;sawa@sci.kumamoto-u.ac.jpHP;http://www.sci.kumamoto-u.ac.jp/~sawa/−119−

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