2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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革新的合成法による新規ケイ素架橋型π共役化合物群の創製 大阪大学大学院基礎工学研究科教授 新谷亮 1. 研究の目的と背景 ケイ素で架橋されたπ共役有機化合物は、その電子的・光学的性質から材料科学において有用な化合物群として期待されている。これらの最も典型的な合成法は、予めπ電子系を連結させてπ共役分子を合成し、それをケイ素で架橋するという手法であるが、アクセス可能な分子骨格に大きな制限があるのが現状である。例えば、構造が比較的単純な縮環オリゴシロールでさえ、このような従来法で合成することは困難であり、シロールが3つ以上縮環した化合物の合成例は知られていない1。さらに、二重結合の位置が異なるキノイド型の縮環オリゴシロールについては、これまでに全く合成されたことがなかった。このような背景のもと、本研究において我々は、新たな合成戦略として、ロジウム触媒によって2つの異なるオリゴ(シリレン-エチニレン)間を縫い合わせるように複数の炭素-炭素結合を一挙に構築する「縫合反応」を考案し、キノイド型縮環オリゴシロールの初めての合成およびその物性評価について研究を行うこととした(図1)。 SiSiSiRRSiMXnSiSiRRncat. Rh–XSiXnRSiSiRnRRhSiRhXnSiSiRnSiXnRhSiSiSiRRnXRhSiSiSiRRRhXSiSiRRnSiSiSiRR– Rh–Xcarborhodationcarborhodationcarbo-rhodationoxidativeadditionreductiveeliminationnnn 図1 縫合反応によるキノイド型縮環オリゴシロールの合成 2. 研究内容 まず、縫合反応によるキノイド型縮環オリゴシロールの合成を実現するために、最も単純な基質の組合せである化合物1と2aとの反応によるジインデノシロール3aの合成について検討を行った。その結果、ロジウム/シクロオクタジエン触媒存在下、ロジウムに対して過剰量のシクロオクタジエンを添加することにより、4つの炭素-炭素結合形成を経る目的の縫合反応が効率よく進行することを見出し、化合物3aを高収率で得ることに成功した(式1)2。 この反応条件を用いることで、置換基の異なるいくつかのジインデノシロール3が同様に効率よく得られることも分かり(図2)、より長い基質の組合せである化合物4と5から6つの炭素―炭素結合を形成させることにより、3つのケイ素を含むキノイド型縮環オリゴシロールSi3の合成にも成功した(式2)。また、量論量のロジウムを必要とするものの、5つのケイ素を含む生成物Si5を合成することもできた(図3)。さらに、基質の組合せを適切に変えるとともに反応条件を調整することにより、2, 4, 6個のケイ素を含む類縁体Si2, Si4, Si6についても合成を行った3。 BrB(neop)SiMeMePhPh1 (1.3 equiv)2a+[Rh(OH)(cod)]2(8 mol% Rh)ligand (x mol%)Cs2CO3 (1.5 equiv)dioxane/H2O (50/1)80 °C, 20 hSiMeMePhPh3a(neop = OCH2CMe2CH2O)(1)ligand (x mol%)NMR yield (%)nonebinap (10)44128287cod (10)cod (42) SiMeMePhMe3b: 70% yieldSiMeMei Pri Pr3c (Si1): 58% yieldSiPhPhPhPh3d: 61% yieldSiMePhPh3e: 80% yieldSiMePhPh3f: 73% yieldBrOMe 図2 縫合反応により合成したジインデノシロール3 −110−発表番号 54 〔中間発表〕

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