2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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子求引性のシアノ基,アルコキシカルボニル基,またはアミノカルボニル基が2つ置換した活性化アルケンを用いると,対応するアリルフェニル化体が収率よく得られた。求電子剤としてアリル基以外にも,メタリル基やシンナミル基が導入可能であった。 PhCNCNPhCNCNPhCNCNTBSO463%59%72% (w/dppe)PhCNCNPhPhCO2MeCNPh67% (w/dppe)67% (w/dppe)MeOCyPhCNCN52%PhPhCNCN71%NNOOOPhPh42%R1EWGEWG+SiR2OHR3R3+R6Pd(OAc)2 (1.0 mol%)dppp (1.0 mol%)(IMes)CuCl (5.0 mol%)LiOtBu (20 mol%)1,4-dioxane, 100 ºC, 6 hR1R2EWGEWG1.0 eq.R4R4OCO2MeR61.0 eq.1.0 eq.R5R5 図2基質適用範囲 さらに,キラルな二座リン配位子を有するパラジウム触媒を用いると,アリルフェニル化反応が中程度のエナンチオ選択性で進行し,第四級不斉炭素を有する生成物が得られた(図3)。また,アリール銅の不斉共役付加によって生じる光学活性アルキル銅中間体を求核剤とする場合においても,アリルアリール化反応が良好な収率およびエナンチオ選択性で進行した。 PhCO2MeCN+SiPhOH+Pd(OAc)2 (1.0 mol%)L1 (1.0 mol%)(IMes)CuCl (5.0 mol%)LiOtBu (20 mol%)1,4-dioxane, 100 ºC, 6 hPhPhCNCO2Me0.30 mmolOCO2Me0.30 mmol0.45 mmol*HNNHOOPPPhPhPhPhL1e.r. = 75:25 PhCNCN+SiArOH+Pd(OAc)2 (1.0 mol%)dppe (1.0 mol%)CuCl (5.0 mol%)L2 (5.0 mol%)LiOtBu (20 mol%)1,4-dioxane, 100 ºC, 6 hPhArCNCN0.30 mmolOCO2Me0.30 mmol0.30 mmol*e.r. = 88:12PPL2Ar = p-MeOC6H4 図3不斉アリルフェニル化反応 最適条件において,パラジウム触媒または銅触媒のどちらか一方を添加しないと反応は全く進行しなかったことから,本反応は,パラジウム触媒サイクルおよび銅触媒サイクルの二つからなるシナジー型協働触媒サイクルで進行するものと考えている(図4)。パラジウム(0)錯体はアリル炭酸エステルを活性化し,π-アリルパラジウム(II)錯体となる。一方,有機ケイ素反応剤と銅アルコキシドより生じる有機銅は,アルケンへと付加し,アルキル銅中間体を生じる。これがπ-アリルパラジウム錯体と反応して,カルボアリル化生成物が得られる。 PdLCu-OMePd CycleCu CycleR2EWGOCO2MePPPd0PPSiHOR1OSiLCu-R1EWGR2CuLR1EWGEWGR2R1EWGEWGCO2MeOHPdPP(C–CuL)C–CuL+OMeOMe 図4反応機構 3. 今後の展開(計画等があれば) 現状の問題点として,適用可能なアルケンが高度に電子不足なものに,求電子剤がアリル化剤に限られている点が挙げられる。したがって,これを克服できる協働触媒系の創出を計画している。前者に対しては,銅とは異なる遷移金属の利用が,後者に対しては,クロスカップリング反応研究における豊富な知見を活かして,パラジウム上の配位子の検討あるいはニッケル触媒の利用が考えられる。これに加えて,エナンチオ選択性の発現も達成できれば,極めて一般性の高い炭素骨格構築法として有機合成に広く応用可能な反応になるものと期待できる。 4. 参考文献 (1) J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 6952. (2) Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 6274. 5. 連絡先 住所:京都市西京区京都大学桂;電話番号:075-383-2443; E-mailアドレス:nakao.yoshiaki.8n@kyoto-u.ac.jp −101−

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