2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
108/223

自己組織性デンドロン修飾単分散磁性ナノ粒子: 超高密度有機無機ハイブリッド磁気メモリへの展開 東北大学 多元物質科学研究所 准教授 蟹江 澄志 1. 研究の目的と背景 有機無機ハイブリッド材料は,ナノ・分子原子レベルでの有機-無機界面制御に着目した複合機能材料である.このような材料の開発は,有機物と無機物の相反する機能や全く新しい相乗機能・物性の発現・創出に繋がることが期待されている.研究代表者はこれまでに,旭硝子財団研究助成などの支援を受け,あらたな機能性マテリアルとして “有機無機ハイブリッド液晶” を開発してきた.1,2) この材料は,無機物にない流動性を有しつつ有機物単独では為し得ない高い光屈折率を示し,“相反機能発現材料”の代表例となった.一方,研究代表者らは,ナノ粒子からなる超格子を構築する手法として,液晶性有機デンドロンを単分散球状金ナノ粒子表面へ導入することでデンドロンの自己組織性をナノ粒子に転写する手法を開拓した.3,4) この手法によれば,ナノ粒子にデンドロン由来の液晶性が付与されることで“有機無機ハイブリッドデンドリマー”となり,ナノ粒子が自発的に二次元・三次元組織構造を形成するのみならず,温度変化によりカラムナー構造からキュービック構造へと自己組織構造変化が誘起される (Figure 1).一方,粒径 20 nm 前後の磁性ナノ粒子は,単磁区構造を形成することで高い保磁力を示す.このような磁性ナノ粒子について,一つひとつのスピン状態を制御し,磁気メモリとして活用するには,個々の粒子を広い粒子間隔で完全に孤立化し,かつ精緻な大面積規則配列構造を構築することが必須である.そこで研究代表者は,Fe3O4 強磁性ナノ粒子について,精密デンドロン修飾により,有機無機ハイブリッド磁気メモリの開発に繋がる二次元・三次元組織構造形成手法開発に取り組んだ.さらに,得られる自己組織構造を熱可逆的に制御する手法を確立することで,情報の ON-OFF 制御を行う新たな手法を提案することを目的とした.その具体的なイメージを Figure 2 に示す.一方で,ナノ粒子表面への液晶性有機デンドロンの修飾は,デンドロンの自己組織性をナノ粒子に転写するうえで極めて有益な手法である.そこで本研究では,代表的なナノサイズ粒子である量子ドットとして CdS に着目し,CdS ナノ粒子表面にデンドロン修飾することで自己組織性を付与し,その量子ドットとしての蛍光発光性の制御についても取り組んだ.ここで,量子ドットの発光・消光がナノ組織構造の制御により可能であることを示すことができれば,量子ドットの励起エネルギーを磁性粒子に転写できることを意味する.すなわち,本研究で合成する磁性粒子の磁気特性を外部励起光の照射により制御することにも繋がることが期待できることから,両者について検討することとした. 2. 研究内容 本研究では,アミノ基を有する液晶性有機デンドロン G2 と表面カルボキシル基を有する Fe3O4 ナノ粒子とのアミド化が鍵である.そのため,単分散性に優れた表面カルボキシル基修飾強磁性 Fe3O4 ナノ粒子の合成法並びにその定量評価法の確立は不可避である.本研究では,錯体熱分解法により得られる粒径 6.5 nm Fe3O4 ナノ粒子について,表面に存在するオレイルアミンおよびオレイン酸とカルボキシル基を有するホス Figure 1. ナノ粒子への液晶性デンドロン修飾による液晶性自己組織構造形成の模式図 Figure 2. デンドロン修飾による精密配列構造の形成と磁気誘導加熱液晶相転移による磁気メモリ構造制御の模式図 −98−発表番号 48〔中間発表〕

元のページ  ../index.html#108

このブックを見る