2017 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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ノマーの割合を変えることで,力学物性に大きな影響を及ぼすことがわかった.明確な降伏点があるプラスチックのような硬い性質,及び粘りがありよく伸びるゴムのような性質をゲルにもたせることは可能である.レンズに使用できる強度と変形性を持っている.00.51223344020030040050060070080001002003004005006007008004.54.03.53.02.52.01.51.00Strain[%]Stress[MPa]M1:M2:M3図2.引張試験で得られたゲルの応力-ひずみ曲線.0204060801001.501.481.461.441.421.40Ra,oofM3[mol]Refrac,veindex[-]1.4211.4351.456図3.開発したゲルの屈折率.図3に屈折率の測定結果を示す.図4を見ると合成したまま常温保存したゲル(As-prepared)の屈折率はM3の入れる割合を変えても変化しないことが確認できた.屈折率は1.49程度の値を示した.純水に平衡膨潤させたゲル(Swolleninwater)の場合,M3の入れる割合が高いほど屈折率が増加する傾向を示した.(2)屈折率分布を持つゲルレンズの作製屈折率の異なる3種の透明ゲルを用いて,屈折率分布を持つゲルの開発を行った.レンズの最終使用環境を考慮し,平衡膨潤させたゲルを使用した.また,水晶体の屈折率分布構造を模倣し,中心の部分から外側の部分にいくにつれて,徐々に屈折率が低くなっていく構造のゲルをn=1.456,1.435と1.456のゲルを用いて作製した.しかし,図4に示すように,ゲル層とゲル層の界面が残っていて,レンズの透明度が低くくて全体に白っぽくなっていた.界面を無くしてレンズをより透明均一に仕上げるには,レンズの作製方法をさらなる工夫改善とともに,一体化立体造形に適用可能性の高い3Dプリンタ技術の導入も検討していきたい.1.4211.4351.456 図4.水晶体の屈折率分布構造を模倣したゲルレンズ. 3. 今後の展開 白内障治療の眼内レンズ挿入手術は米国で年間約290万眼,ヨーロッパでは300万眼,日本では約100万眼以上(2014年現在)行われており,全世界で最も大量に行われている人工臓器移植手術だと言われている.高齢化が進む現代,眼内レンズ市場は,眼科医療機器市場の中でも重要な位置を占めている.均一に仕上げる,透明性アップ等の課題もまだまだたくさんあるが,本申請研究が成功すれば,日本を含め,世界中およそ5,400万人の白内障患者の治療に役に立つこととは間違いない. 4. 参考文献 1)Y. Osada, H. Okuzaki, H. Hori, Nature 1992, 355: 242-244. 2)A. Matsuda, J. Sato, H. Yasunaga, Y. Osada, Macromolecules 1994, 27 (26): 7695–7698. 3)S. Harada, R. Hidema, J. Gong, H. Furukawa, Chemistry Letters 2012, 41(10): 1047-1049. 4)J. Gong, H. Furukawa, Expected Materials for the Future 2013, 13 (1): 5-8. 5)M. H. Kabir, J. Gong, Y. Watanabe, M. Makino, H. Furukawa, Materials Letters 2013, 108: 239-242. 5. 連絡先 住所:〒992-8510 山形県米沢市城南4丁目3-16 山形大学大学院理工学研究科 TEL: 0238-26-3135; FAX: 0238-26-3248 E-mail: jingong@yz.yamagata-u.ac.jp HP: http://gong-lab.yz.yamagata-u.ac.jp −91−

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